ブランド設立20周年を祝い「ヴィクター&ロルフ」が5年ぶりにクチュール・コレクションにカムバックした。
会場には、小石を敷き詰めたようなドットプリントの巨大な布。ショーは、デザイナーデュオがステージ中央で座禅を組み、悟りを開くかのような場面から始まった。2人が一息つくと、今度はモデルが登場。全員黒のテクニカルシルクのドレスで、そこには「ヴィクター&ロルフ」のアイコンである大きなリボンもあるが、ナゾのくぼみやナゾのひだ、そしてナゾのファスナーなどが走っている。いずれも左右非対称のアシンメトリーで、アヴァンギャルドなシルエットだ。
モデルは会場を一周すると、デザイナーの元にやってきて、座ったり、寝転んだり、立ちすくんだり。2人はポーズを決めた彼女たちのドレスのドレープの具合、特に地面に広がった裾などをチェックし、必要あらば修正を加えていく。すると次のモデルは、前のモデルに背中を預けたり、肩を寄せたり、はたまたドレスの巨大な裾で彼女を隠してしまったり。こうして、まるで組体操のように複数のモデルがグループで1つの形を作っていく。
最終的に生まれたのは、デザイナーが2年前に訪れた京都・竜安寺の石庭を思わせる岩だった。「ヴィクター&ロルフ」は、3人か5人、ないしは9人で作る岩の形を最初に決めて、その後、岩を複数のパーツに分解。一人ひとりのドレスに形を落とし込んでいった。つまり、今シーズンのドレスは、最初に一着一着の形があるのではなくて、最終的には組み合わせて岩の形にするための部品の一部というわけだ。通常のプロセスをあえてさかのぼるような実験的クリエイション。クチュールの、新しいものを生み出す場という機能をあらためて認識させる。
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