2014年春夏シーズンの「メルセデス・ベンツ ファッション・ウィーク 東京」のトリを飾ったのは「アリス アウアア(alice auaa)」だった。若くして水の事故で亡くなった美しい少女の物語を、モノトーンの装飾ドレスとオーガンジーを主力としたボリューム豊かなディテールで表現している。楊柳生機(ようりゅうきばた)に洗いをかけるなど、「今まで触ったことのないテキスタイルを使った」とデザイナーの船越保孝は語る。主人公の"薄命"を透け感のあるホワイト、異国の女王と王子が登場するストーリーをホワイト&ブラックのウエアで制作。シルクオーガンジーのパネルドレスや包帯のようなヘッドピース、フリルがヘムラインから見え隠れするディテールが印象に残る。はみ出るフリルは無造作で大胆、ハードなメッシュ地や断ち切りのディテールも今回の特徴。その後、水の精霊となった少女が、絶望と悲しみを叫ぶさまを描いたという、コルセットモチーフのワンショルダードレスは、グランジ感を加えた力作だ。
テーマは"SLEEPS IN WATER"。スクエア状の金属オブジェを配したドレスや、石膏で制作した魚の顔をモデルに装着するなど、驚くような演出もあったが、船越は今回のコレクションに手応えを感じている。また、デザイナーズビジネスの本番である展示会でどのような商品が並ぶのか、興味深いところでもある。「一つひとつのアイテムを見ると、シンプルなモノがある。デニムパンツに合わせられる単品もあるので、よく見てほしい」と船越。今後は、海外進出にも意欲を示し、パリやニューヨークでコレクションを発表したいという。"明るい日本"だけではなく「日本の陰鬱な部分を、今後も打ち出す」。