ちょっと先の話だが、来年の2月、2014-15年秋冬ウィメンズ・コレクションに合わせて、パリ装飾美術館でエキシビションをスタートすることが決まった「ドリス ヴァン ノッテン」。今回のメンズと9月のウィメンズでは、その展覧会に向け、特別な試みにトライする予定だ。メンズでの特別な試みとは、同美術館のアーカイブから厳選した、18〜20世紀のプリントの転用。荘厳でクラシカルな柄をドライコットンやシルク、ナイロン、シフォン、リネン、そしてウールなど、さまざまなファブリックに転写し、コレクションを華麗に彩った。
プリントの魔術師らしく、そしてトレンドを形作るデザイナーらしく、ドリスはアーカイブから今シーズンの"イット・モチーフ"とも言える、カラフルな花柄をたくさんチョイスしたようだ。「ドリス」の2014年春夏メンズは、まさに「百花繚乱」という言葉に尽きる花柄のオンパレード。バロックモチーフと組み合わせた古典的花柄から、フォトスキャンした現代的なランの花など、あらゆる時代の、ほぼすべての色調のフラワープリントがダークトーンの生地の上に絢爛豪華に咲き乱れた。
特筆すべきは、花がプリントで描かれただけではないことだ。例えば、ごくごく薄いシフォンの上に花柄をプリントしたタンクトップには、さらにカットアウトしたベルベットを張り合わせることで描いた別の花をプラス。同じく花柄のリネンの上にも、ビーズワークで異なる花を加えている。花柄は、実はプリントの下にもある。ドリスは、ダマスク織りやテリー織り(タオルに柄を描く時の織り方)で花柄を描き、その上にもフラワープリントを重ねた。
つまり、1つのスタイルに詰め込んだ花はアイテムごとに異なっているし、そのアイテム1つ1つにはさらに複数の花が時にハッキリ、時におぼろげに咲き乱れている。ただ、それをフェミニンに見せないのは、軽快でありながら美しいテーラリングと、基本はダークなカラーパレットのおかげ。メンズとウィメンズの境界を相変わらず曖昧にしながら、トレンドのフラワーモチーフをプリントの魔術師らしく遊ぶ。今シーズンも「ドリス」に死角はない。
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