リリースには、「volume as garconne and Geisha」とある。この“garconne”が「コム デ ギャルソン」のスペルミスなどではなく、ガリアーノ自身が好んで用いてきた「男の子みたいな娘」を指す“ギャルソンヌ”だとは思うのだが、実際ランウェイに出てきたファーストルックを見ると、「コム デ ギャルソン」が先シーズンに見せた、ビッグシルエットの服そっくり。素材は異なり、ボリューム感こそ少し落としているが、平面な生地の使い方には既視感がある。尊敬するデザイナーの仕事にインスパイアされることはよくあること。だが、スカラップモチーフやオーガンザ使い、ピュアな色使いなどで、よりフェニニティな要素も加わっているとはいえ、「コム デ ギャルソン」がビル・ゲイテンの才能でもって新しい「ジョン・ガリアーノ」のコレクションに昇華されているとは言い難い。ガリアーノ自身が去った後も、これまでメゾンが培ってきたノウハウを引き継ぎ、バイヤス生地を使ったプリントドレスなど、ドレス中心の安定したコレクションを見せてきたが、今シーズンを見る限り、ブランドのアイデンティティ自体が揺らいでいる。あのバイヤスのドレスを作ることができるお針子たちがブランドを去ってしまったのだろうか?といった邪推も浮かぶ。