三越日本橋本店は8月7〜19日、「假屋崎省吾の世界展」を新館7階ギャラリーで開催中だ。華道歴30周年を記念し、自身の美意識や世界観、これまでの軌跡を記すとともに、自身がプロデュースする着物や花器なども展示。今回は三越創業340周年のアニバーサリーを記念する展覧会でもあり、三越所蔵の貴重な歌舞伎衣装も特別展示している。
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假屋崎は5年前から始めた着物のプロデュースについて、「美しさがモットー。たくさんのオファーがある中で、京都の京朋と組み、振袖、訪問着に続き、婚礼衣装も作っている。全国の呉服店などでお見立て会をしているが、どこでも記録を作るほど人気だ。着物の世界では新参者だけれど、価格を抑えたり、昔着物のような帯や柄などの決まりごとなどの枠にとらわれずに、着こなしの応用が利く万能帯を作るなど時代に合わせていることが理由だと思う」と話し、時代対応力や顧客ニーズに合わせた提案力の大切さを力説する。「呉服はかつて2兆円市場だったものが、2000億円へと10分の1に縮小しているが、世界に誇る文化を踏襲しつつ、現代感覚を取り込んで、世界に良さを発信していきたい」と意気込む。パリのプティ・パレ宮殿での個展や、ローマ映画祭での作品披露などに続き、「エミール・ガレ」などで知られるドーム社から依頼されて新デザインのガラス器を秋に発表したり、12月にはタイでプミポン国王誕生日を祝う招待個展を開くなど、海外での活動も活発化している。
同氏が三越日本橋店で個展を開くのは、2004年の新館オープン時を含めて5回目(うち、1回はカツラユミとのコラボレーション)。亡父が中央区役所に勤務していた際に中央ホールにある天女像の設置に携わったり、妹が三越に勤めて1階で働いていた縁もあり、三越に対する思い入れはかなり強いという。展覧会初日に中央ホールで行なったデモンストレーション&トークショーでも、観客とともに「花は心のビタミン!お買い物は三越で」と唱和した。
<三越所蔵の歌舞伎衣装>
黒繻子地正月飾模様縫打掛
六世尾上菊五郎(1885?1949)所用。「助六」の揚巻を演じる際に着用した打掛で、正月飾りを大胆に表現している。襟元に譲葉を添えた橙と御幣を据え、肩山・袖山には裏白とともにて注連縄を滝のごとくに配している。上前・下前には竹とともに豪華な門松を縫い表し、裾には羽子板と羽根、手毬を、そして余白には大柄な梅花を華やかに散している。歌舞伎衣裳の中でも、最も絢爛たる意匠様式を示す打掛。
白斜子地鯉の瀧登模様染縫着付
十世市川団十郎(1882?1956)所用。非常にダイナミックな「鯉の瀧登り」の図様は、歌舞伎十八番の一つとして「押戻」を復活した際、創案されたものといわれる。中国の黄河中流にある「龍門」は流れが急で、そこを越えることのできた鯉は龍になると伝えられる。著名な画題であるが、藍のグラデーションを効かせた流水や金銀糸で躍動的な鯉の表現は特徴的で、浮世絵師の渓斎英泉(1790?1848)が天保初期(1830年頃)に描いた「鯉の瀧登り図」を髣髴させる。荒事の演出に相応しく、また吉祥性に富んだ逸品。
■「假崎省吾の世界展」
場所:三越日本橋新館7階ギャラリー
デモンストレーション&トークショー(各回約30分)
・8月7日(水)、8日(木)、9日(金)、12日(月)、13日(火)
. 各日午前11時から/午後2時から
・8月10日(土) 午前11時から
・8月11日(日) 午前11時から/午後1時から/午後3時15分から
場所:本館1階中央ホール〔入場無料〕
※着席希望者は各デモンストレーション開始時間の50分前から新館7階ギャラリーで先着80名に整理券を配布(整理券の配布は一人1枚)※中央ホールはオープンスペースで、整理券がなくても観覧可能