先日「エ モモナキア」のコレクションに対して、中森明菜の本質を理解し切れていないとツッコミを入れたが、誤解のないよう弁明しておくと、これは80年代に聖子や明菜を愛した「アイドルおたく」としての印象であり、コレクション作品としては二人のデザイナーの成長が感じられた。ショー終了後に、城賀くんと玉置くんに会って直接伝えたが、会場に集まっていた観客の楽しげな表情を見れば、彼らが意図した「ファッションの力」は十分に発揮できたと思うし、ヘアメイクを含めた作品の完成度はこれまでより数段アップしている。ともすればストイックで排他的なムードの作風に陥りがちな東京の若手クリエイターの中で、捻りを効かせたポップな作品世界を標榜する彼らの存在には期待したい。
この二人の若手が創造する世界観は、単に日本の服飾学校の学生が考えついた「卒業制作の面白いアイデア」というレベルではない。共にパリに留学し、「ランバン」や「バレンシアガ」で修行を積んだ実力派。それだけに、アルベールやニコラが素材の開発にどれだけの時間と労力を割いているかは身に沁みて理解している筈。こういうクリエイターにこそ、素材開発の資金提供(もしくはテキスタイル業界のサポート)を積極的に支援して、彼らの作品レベルの向上を目指せるよう援助してあげたいものだ。どこか男気のあるテキスタイルメーカーはないものか?東レや三菱レイヨンあたりに一考を促したい。
■「WWDジャパン」編集長 山室一幸
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