幅広いランウェイには、透明のアクリスパネルがランダムに並び、モデルが歩くとシンプルでミニマムな服のシルエットが少し歪んで見える。そのわずかな歪みは服に見るパターンのテクニックにも反映されている。
ジル・サンダー本人がメゾンに戻って3シーズン目。サンダー本人の口から出たキーワードは、「エフォートレス、3D、ファブリックの力」だ。「ひとりひとりの女性のパーソナリティが大切。すべての女性に向けて服を作っている」と言うサンダーが意識を集中させたのは、装飾がなくとも女性をきれいに見せる立体的なパターンやカッティングとそれを実現させるための素材選びだ。そのスタンスは、以前と全く変わらないが、明らかに新しい時代の空気感を孕んでいる。
ポケットの延長でとったダーツがほっそりとしたウエストラインを作り、前から見ると身頃とつながった袖は後から見るとダーツを取り、丸みを持たせてある。ジャケットの多くはボタンがなく、ラペルの芯地も使用せず、カーディガン感覚でさらりと羽織ることができる。それでも身体のラインを"きちんと"見せることができるのは、パターンと素材の力ゆえだ。
アイテムはドレスを中心に、クロップド風のトロンプルイユのニットや、メッシュとジャカードとジャージをはぎあわせたトップス、ボーイッシュなショートパンツなど。
人間やフォークなどあらゆるモチーフが混在する不思議なプリント柄はアリギエロ・ポエッティによるもの。色は、ナチュラルカラ—を中心に、錆びた銅のような緑、北極の太陽のような白っぽい黄色など、独特なトーンを差し込む。
引き続き日本製の素材も多く使用している。例えば、ファーストルックに見るラフィアのようにも見えるざっくりとした編み地のコットンがそうだ。
フィナーレは鳥の羽根をびっしり貼りつけたシリーズ。いずれも非常に軽やかで"エフォートレス"というキーワードとマッチする。