シルバーの椅子を並べてサロン風に作った会場のフロントローには、エマニュエル・アルト=仏版「ヴォーグ」編集長をはじめ、業界有名人がずらり。サンディカ公式スケジュールで発表している「サカイ(sacai)」は今や、パリコレの重要ブランドのひとつになっている。
赤、グリーン、オレンジ。そして白とのコントラストが眩しいピンクなど、はっきりとした強いカラーパレットでショーはスタート。スポーティで軽やかな素材と合わせて、これまでよりもアクティブなイメージだ。
ポイントは一から作り込んだ素材使い。これまでは、メンズ服とフェミニンなディテールなど対象的な要素を一着の服の中でミックス表現してきたが、今回は「素材の中でハイブリッドにした」と阿部千登勢。パッと見では分からないが、数ミリの薄い生地の中に、いくつもの要素がハイブリッドされている。
例えば、クラシックなグレンチェックは、織った後にピンクなど明るい色で染めてニュアンスを加え、サテンとボンディングし、さらにパンチングをしている。結果、ハリ感と機能性を併せ持つ生地が生まれ、独特なボリューム感が生まれている。白襟が清楚なシャツワンピースに使った青と白のストライプ生地や、ウエストにドローストリングを施したスポーティなグレーのワイドパンツも同様のテクニックを採用している。いずれもボリューミーで、非常に軽やかだ。
一見リラックスした服でも、強さが浮き出てくるのは妥協しない素材開発からくるもの。ただし、どんなに凝った素材使いを追求しながらも、最終ジャッジは阿部自身が「着たいかどうか」。その軸をブラさないところも「サカイ」の強さだ。