パリ・リュクサンブール公園のオランジェリー(温室)を会場に選んだ「エルメス(HERMES)」。ここでファッションショーが行なわれるのは史上初だという。まるで以前からそこにあったかのような、温室内のたくさんの熱帯植物は、実はショーのために持ち込まれたものだという。手の込んだ演出だが、ごく自然体。それが「エルメス」だ。
熱帯雨林に雨が降った後の様子を再現したというコレクションは、さまざまな質感のグリーンの服のバリエーションでスタートした。最初は雨上がりの濡れたような質感と深みのあるグリーン。その後、ブルーグリーンから明るいグリーンへと展開してゆく。
素材は、リネンやコットン、ウールジャカードといった天然素材と、布のように柔らかいレザーが中心。アイテムは、ゆったりとしたロングワンピースや、クロップド丈のパンツと丸いシルエットのトップスなど、カジュアルでリラックスしたもの。柔らかいレザーは着物のように身体を包みベルトで留める。
ショーが進むと太陽が差して森全体が明るくなり、緑が生き生きと呼吸を始める。服のカラーパレットも白からイエロー、オレンジと明るくなってゆく。アールデコ調のプリントはよく見ると馬の柄になっている。
女性の身体の凹凸をストレートに表現するセクシーな服はひとつもないが、たっぷりと使った上質な生地が光を受け、女性の身体のシルエットをほんのりと浮かびあがらせる表現は官能的だ。留め具を使わないキャンバスのトートバッグや、水連の花をプリントした布地のロングブーツなどアクセサリーも自然体。
ラストルックはベテランモデルが着るオールホワイトのラップシャツとハイウエストパンツ。ペタンコの靴でゆったりと歩く様がエレガントだ。