ラグジュアリー・ブランドそのものよりむしろ(!?)、ブランドロゴをパロディしたアイテムを身につけるのがストリートで流行っている。一部のファッショニスタの間では、本物の「エルメス(HERMES)」よりも「ブライアン・リッテンバーグ(BRIAN LICHTENBERG)」 が「エルメス」のロゴをアレンジした「ホーミース(HOMIES)」のスウェット、「バルマン(BALMAIN)」よりも「リーズン・クロージング(REASON CLOTHING)」の「ナウマン(NAWMAN)」Tシャツ、「ジバンシィ バイ リカルド ティッシ(GIVENCHY BY RICCARDO TISCI)(以下、ジバンシィ)」よりも「LPDニューヨーク(以下、LPD)」の"ティッシ風"フットボール・ジャージーなどが、ウケていると言う。ラグジュアリー・ブランドのロゴがストリートウエア・ブランドの手により、ハイエンドとローエンド、シックとストリートのように対極するエレメントとしてミックスされ、もてはやされている。ラグジュアリー・ブランドの幅広い普及と、ハイファッションとユースカルチャーの融合を表すものだ。
しかし、このトレンドには常に登録商標の保護問題がつきまとい、ブランド側はロゴを守りつつスタイルに敏感な顧客予備軍を確保していくために、どのような法的戦略をとるべきか、試行錯誤している。「これは、正に今のトレンドを反映している問題。法律、表現の自由、知的財産、また表面的なビジネス及び商法などさまざまな面を包括するとても興味深い現象だ」とファッション業界に多くのクライアントを持つ法律事務所であるハンド・バルダシン&アンバージーのダグラス・ハンドは述べる。「デザイナーズ・ブランドは、これらに関して常に監視しておくべき。それらのブランドの価値は、ロゴに代表される知的財産だ。登録商標の保護を強化しなければビジネスにはならない」と続ける。
今、特に、ストリートウエア・ブランドに人気があるのが「エルメス」だ。「ブライアン・リッテンバーグ」の「ホーミース」のデザインのほかに、ストリート系ブランド「ユニフ(UNIF Clothing)」の「ホットメス(HOTMES)」や「ファット・アバウト・イヴズ(WHAT ABOUT YVES)」の「ホーネス(HORNES)」などのパロディ例がある。これらはストリートウエア小売店のカーマループやアソスで販売されているほか、ブラウンズ、コレット、レーン・クロフォード、ネッタポルテなどハイエンドの小売店でも取り扱われている。「エルメス」は登録商標を断固として守るが、パロディが法的なグレーゾーンにあるということを認識しており、「徹底的に知的財産の不正使用を防止するのと同時に、アーティスティックな表現の自由を認める。何事もケース・バイ・ケースで法的見地からのコメントはしない」と公表している。「パロディが法に触れるか否かというのは、消費者が2つの異なるブランドに対して混乱するか、パロディが本家本元のブランドのイメージを損ねるかという2点がポイントになる」と知的財産権に特化した弁護士のジョセフ・ジョコンダは述べる。「このような活動に関して、ブランド名やロゴ使用に対して、いかなる目的であっても厳しい対応をするブランドもあれば、取るに足らないことだと見なすブランドもある」と続ける。
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