ファッション

三越伊勢丹がエイベックス、古布のプロと組んで大麻布ブランド「麻世妙」を発売 伝統と最新技術を融合し新しい価値を提案

 三越伊勢丹は、エイベックス・グループと協業して大麻(たいま)布を現代によみがえらせた新素材ブランド「麻世妙(majotae、まよたえ)」のプロモーションイベント「麻世妙〜日本人が忘れていた布〜」を伊勢丹新宿店7階催事場で開催中だ。会場内では、「麻世妙」のもつ魅力を「過去」「現在」「未来」の3つのテーマでご紹介。貴重な自然布コレクションや、「ヨウジヤマモト」や「ケイタマルヤマ」「ユイマ ナカザト」とのコラボレーション商品や、子どもから大人まで着られる白シャツコレクション、8人のテイラーと組んだメード・トゥー・メジャーのメンズスーツなどを展示販売(スーツは20万5200円〜)。さらには、ヘアメイクアーティストの加茂克也、シューズデザイナーの串野真也、中里唯馬などのインスタレーションを展開している。

 1日にはオープニングセレモニーを開催し、今回のプロジェクトの立役者で、自然布研究の権威である吉田真一郎・近世麻布研究所所長、日本古来の布に造詣が深い山口源兵衛・誉田屋源兵衛十代目、そして、竹内成和エイベックス・グループ・ホールディングス代表取締役CFO、大西洋・三越伊勢丹ホールディングス社長らが出席し、大麻布の復活・振興に賭ける思いを語った。

 三越伊勢丹は2011年から日本の伝統文化や産地とサプライチェーンによるモノ作りにより新しい価値をお客さまに提供する「ジャパン センスィズ」に取り組んできた。今回はその最新作の一つとなるが、大西社長は「4年半前に源兵衛さんに素材を見せていただき、とても興味を持った。大麻布の商品化は、素材革命が起きると思う。また、これまでの『ジャパン センスィズ』はテキスタイルを使って商品開発を行うことが多かったが、糸の段階から開発しているので、サプライチェーンの重要なファクターになるのではないか」とコメント。今回は30ブランドと組み、ウィメンズウエア52型、メンズウエア27型、その他、子どもや服飾雑貨など約100型を開発。「秋冬にはリビングを含めてバリエーションも増え、精度も上がってくる」と期待を寄せる。

 山口誉田屋十代目によると、「大麻は全ての布の中で、全体バランスが最も高レベルな布だ」という。吸汗速乾性や抗菌性があり、「400年前から綿に取って代わられたが、大麻は1万年前から人類の命を救ってきた布。風合いも良く、経年変化によって良化する稀有な布であり、惚れ込まざるを得ない」とその良さを説く。

 エイベックスの竹内CFOは、「当社は映像や音楽のジャンルを超えて、感動体験創造企業を目指している。今回の事業は、3年前に当社の松浦(勝人・社長CEO)が吉田さんと源兵衛さんに出会い、日本の象徴的な存在である大麻布の工業化をサポートすることになったのが始まりだ」と経緯を説明する。総合商社やモノ作りに定評のあるメーカー出身の山嵜竜司・麻世妙プロジェクトリーダーによると、「一番困難だったのは、紡績部分」だったが、1918年(大正7年)創業のトスコとタッグを組み、トップシークレットのプロジェクトとして広島県三原市の工場で開発を重ね、製品化に成功。吉田所長に「古来から続く素材の手作業の風合いと、現在のテクノロジーとが融合した"究極の糸"が開発できた」と言わしめた。まずは三越伊勢丹との"相思相愛"を軸に商品展開し、将来的には海外でも糸・テキスタイルなどを販売していきたい考え。エイベックスが繊維事業を手掛けることに意外性を感じるが、若泉久央・社長室部長は「R&D案件だが、吉田さんと山口さんを軸にした人ビジネスであり、浜崎あゆみやEXILE(エグザイル)をプロデュースするのと考え方は同じ。さまざまな規制から、現在は原材料を海外から仕入れているが、本当にいいものだと認めてもらうように努力し、素材から日本で生産して100%メード・イン・ジャパンにして海外にも訴求していきたい」と話す。

 クリエイターとして参画した中里唯馬「ユイマ ナカザト」デザイナーは、「布の歴史を教えてもらって勉強になった。今シーズン(15年春夏)のテーマが"ドクターコート"だった(厳しい環境から身体を保護するため、機能性に優れたヘンプやホースレザー、デニムを用いたコレクションを発表)ので、まさにピッタリの企画。抗菌作用や機能性が高く医療用にも使われたという大麻布を使って、白いドクターコートをイメージしたコートとストール、パンツなどを作った。ナチュラルな風合いが、これまでのハイテク素材などとのコントラストとなって良い」という。実は三越伊勢丹との取引きはこれが初めてのこと。期間限定の入館ネームバッジを付けた中里は「これがきっかけで、ビジネスが広がれば」と話した。

 「麻世妙」は4月4日に虎の門ヒルズで行われるF2(35〜40代女性)向けイベント「東京ミュゼ」でも披露する予定。

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