2009年春夏コレクションを最後に活動休止していた「グリーン」のデザイナー、吉原秀明と大出由紀子が、2013-14年秋冬からデザイン活動を再開する。ブランド名を「ハイク」に改め、今年3月末開催の展示会でウィメンズのみの発表からスタートする。社名はボウルズのままだ。テーラードジャケットやデニム、モッズコートなど、スタンダードアイテムの中に独自の感性を織り込んだデザインで数々のヒットを生み出してきた吉原と大出。子育てをしながら、再スタートを切った2人が描く新ブランドの方向性とは?吉原・デザイナーに話を聞いた。
WWD:3年間の休止を経て2013-14年秋冬からブランドをスタートする理由を教えて下さい。
吉原秀明(以下吉原):活動休止を決めたときに2〜3年で再開したいという思いがありました。しかし現状は当時の100%の時間と情熱を仕事に向けられるような状況ではなく、特に大出は3歳と1歳の子の母親という大切な役割を担っています。今回活動を再開するにあたって、大きな心境の変化が有りました。中途半端な状態で続けられないと言う気持ちで休止しましたが、その状況はあまり変わっておらず、以前の考えのままなら再開することはなかったと思います。3年と言う月日を経て、時間的な制限がある中でも精一杯、今やれる事を表現しようと言う気持ちになり、活動を再開することを決めました。
WWD:ブランド名を「グリーン」から「ハイク」に変更する理由を教えて下さい。「ハイク」の意味は?
吉原:「グリーン」として過去に築き上げた財産もたくさんありますが、時間的制限によるビジネススケールの縮小、3年間のブランク、スタッフの人数など、現在の状況、環境ではそれを背負うには少し無理があると感じています。今の心境ではこれまでの知識や経験を生かし、「グリーン」を立ち上げた頃の気持ちで新ブランドをゼロからスタートし、改めて階段を一段づつ上っていくほうがしっくりくると感じたため、新ブランドとして再スタートすることを決めました。「HYKE」はデザイナー自身の家族のファーストネームのイニシャルを並べたものです。今回、新しいブランド名を考えるにあたってできるだけ自由な気持ちでデザインがしたかったので、コンセプトを表したり、デザインに直接影響するような意味のある名にはしたくありませんでした。シンプルに自らのアイデンティティを表すことが良いと思い考えました。名字をそのままでもよかったのですが、自分の名字をブランド名にすることに少し違和感があったので、アレンジしてこの名前を作りました。
WWD:「ハイク」のブランドコンセプト、大切にしてゆきたいこと、などあれば教えて下さい。
吉原:ブランドコンセプトは「HERITAGE AND EVOLUTION」。服飾の歴史、遺産を自らの感性で独自に進化させるという意味。できるだけ自由な状態で新しい発想が生まれるように、当面はテーマを設けずデザインしていきます。
WWD:「グリーン」の時と変わらない考え方、変わる考えカそれぞれを教えて下さい。
吉原:スタンダードなアイテムをベースとし独自の感性で再構築していく考え方は変わらないと思います。「ハイク」として一番の変化は、当面シーズンテーマを決めずにデザインすることだと思う。シーズンテーマを設けてその世界観を追求する事もひとつの考え方ではありますが、過去にその方法でコレクションを発表していて、何かこのままでは目の前の壁が超えられないような感覚を感じていました。あえてしばらくはテーマを作らず、自由な状態でいろいろな要素を組み合わせることに挑戦してみたいと考えています。
WWD:休止の理由が大出さんのご懐妊であり、「2人でなければグリーンはできない」という考え方が印象的でした。子どもを授かったことで仕事の仕方に変化があれば教えて下さい。また、そのことはデザインにも反映されますか?
吉原:現在2人の子供を育児中です。育児をしながらの仕事はとにかく時間が足りないことにつきます。仕事に100%の時間を使う事ができないので、効率よく作業することが求められます。しかし日々子育てをすることで逆に学ばされることが多くあります。それにより自身が成長できたり、価値観が変わったことなどが今回どのように仕事に影響してくるのかまだ分からないのですが、今後の楽しみでもあります。
WWD:2013-14年秋冬時点での展開アイテムと型数を教えて下さい。
吉原:展示会ではレディースのみを発表します。「グリーン」休止前の半分以下のスケールにする予定です。
WWD:2013-14年秋冬の発表時期と形式は?
吉原:現状では国内(東京)で展示会のみを予定しています。時期は2013年3月中旬から末頃を予定しています。
WWD:直営店再開の予定を教えて下さい。
吉原:現在のところ直営店舗の出店の予定はありません。
WWD:休止している間に、服作りやファッションビジネスを取り巻く環境は色々と変化しました。それらを見て、感じたこと考えたこと、「ハイク」に反映してゆきたいことがあれば教えてください。
吉原:私たちが休止している間に、本当に大きく状況、環境が変化したと感じています。しかし、変らずに継続したいと思っている事があります。それはMADE IN JAPANの商品を意識的に継続していくことです。以前より一部の海外生産の商品もありますが全体の8割以上を国内で生産しており、携わってくれている職人や技術者の強力なしには私たちのクリエイションは成立しないからです。国内生産が可能な価格帯での販売を続けるためには、バイヤーやエンドユーザーの方たちにそれに見合う魅力的な商品、ブランドでなければなりません。この事に対しては以前と変わらず挑戦し続けたいと考えています。