ロエベ(LOEWE)財団は12月2日から2016年1月17日まで、マイアミ・デザイン地区にあるロエベ ブティックで、「ロエベ」クリエイティブ・ディレクターのジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)がキュレーションを務める初めてのアートエキシビション"CHANCE ENCOUNTERS"を開催する。
「現在のアブストラクトなポートレートを表現するイメージの集合」として考案したという同展では、過去と現在の4人の英国人アーティストにフィーチャーした。アンセア・ハミルトン(Anthea Hamilton)、ポール・ナッシュ(Paul Nash)、ルーシー・リー(Lucie Rie)、ローズ・ワイリー(Rose Wylie)の作品、約40点が並ぶ。
ジョナサンはこのプロジェクトについて「マイアミのロエベ ブティックの構想を練った時に、最初に浮かんだアイデアは、『スペインの歴史とモノ作りをモダンに持ち込んだ環境を創りたい』というものだった。このプロジェクトの最終目標は、アーツ&クラフツをはじめとするさまざまな分野の会話を生み出すこと。この展覧会は、最近私の心に残り、私の思考を構成するようになった物を集めた一瞬一瞬のパーソナルなスナップショット。私にとってアートとは、今この瞬間を吟味するためにそれを通して見るレンズのようなもの」とコメント。
ロエベ マイアミディストリクト ブティックは今年3月にオープン。ショップ中央には、18世紀にスペイン・ガリシア州とポルトガルとの国境近くに建てられた「ホレオ」を大胆に配置した贅沢な空間だ。「ホレオ」は元々、穀物の保管に使われていたもので、ジョナサンがアメリカに持ち込んだもの。同展覧会では、その「ホレオ」を中心に展示される。
展覧会の核になるのが、オーストリア生まれの英国人陶芸家ルーシー・リー(1902年〜1995年)の陶芸作品。リーは、陶芸技術を新たな美意識の高みへと押し上げ、その繊細なラインと洗練された機能性を特徴とするフォームを生み出した。同展では、リーの装飾的な花瓶やボールと共に、教え子であったハンス・クーパー(Hans Coper)との共作である、より実用性を重視しながらも、優美さを失うことのないキッチンウェアも並ぶ。
リーの明瞭で様式化されたフォームは、英国人画家であり、戦場アーティストとしても名を馳せたポール・ナッシュ(1889年〜1946年)の写真作品の共感を得ている。ナッシュの白黒写真は、陳腐に見える風景——波が寄せては返す海岸や耕したばかりの畑——が持つシュールな美しさが表現されている。
リーとナッシュの抑制されたフォームとは対照的に、ローズ・ワイリー(1934年〜)とアンセア・ハミルトン(1978年〜)の作品は、大げさで、芝居がかっていることに喜びを見い出し、現代世界に対する私たちの理解を形作るイメージのエンドレスな流れの中を漂っている。
時間、場所、テーマに束縛されることのないこのロエベ財団展に対するジョナサンのキュレーターとしてのビジョンは、偶然の出会いが持つ破壊的な美しさを楽しむことにある。