デザインウィークキョウト実行委員会は12月13日、「デザインウィークキョウト(以下、DWK)」のキックオフイベント「DWKトークセッション -京都と外国の融合がもたらす可能性-」を開催した。100社を超える企業の参加が決まったDWKの概要を説明するとともに、京都の企業と海外デザイナーのコラボレーション事例を紹介。丹波に工場を持ち、パナソニックのOEM製作などを手掛ける京都の電機メーカー、クロイ電気と、ドイツ人プロダクトデザイナーのウルフ・ワグナーが登壇し、LEDスクリーン「マトリックス」を製作した事例を語った。
クロイ電気の主力製品は住宅用照明。林伸昭・新規事業推進室室長は「LED事業に多くの企業の参入が増え、弊社は苦戦を強いられていた。新たな会社の柱になるような新規事業が必要と考え、新規事業推進室を設置した」と経緯を振り返る。工業製品から家庭用品まで幅広くデザインを手がけ、ローカルエリアとつながりグローバルなプロダクトを作る「グローバル:ローカル」プロジェクトを推進しているウルフ・ワグナーに、今までにないLED商品を作ってほしいと依頼を持ちかけた。「マトリックス」は動画を専用ソフトで処理したデータを元に内部のLEDが点灯する仕組みで、表面に強化和紙シートを使用することで柔らかい光を生み出し、独特の動きで映像を楽しめるアートデバイスだ。イベントでは、舞妓の舞を映した。これまでにない斬新なアイデアがMoMAの目に留まり、ニューヨークと表参道のMoMAデザインストアでの販売が決まった。
「『マトリックス』は一般的な照明やプロジェクターなどとは一線を画す。LEDユニットを通して、動画を光に変換するシステムを搭載した。イメージしたのは、キャンドルの火の灯(ともしび)。ゆらゆら揺れて、心地よい気持ちになるでしょう? テクノロジーを使った、新しいキャンドルライトだ。日本古来の木材を使った枠や和紙など、伝統工芸ならではのエッセンスも取り入れた」とワグナー。「クロイ電気は、私たちがイメージする日本企業そのもの、それ以上の徹底的な品質管理と高精度の技術を持つ会社だ。この工場なら何でもできる!とワクワクしたよ。ただ、彼らはOEMビジネスが主流で自社ブランドを持っていない。そこで、どんな人に向けて、どんな商品を作るか。それがクロイ電気にとってどんなブランディングになるか?そこを熟考して商品に落とし込んでいった。MoMAに置いてもらえたことは、一つの成功として名誉なことだ」と明かした。
林室長は「言葉の壁など不安はたくさんあったが、文化や言葉が違っても、製作工程は同じ。設計図面という共通言語があったので、思いを共有することができた。日本人の私たちでは絶対に思い浮かばなかったデザインだ。MoMAには、『壁掛けタイプを、ホテルや店舗にインテリアとして置いてもらうのが良いのでは』というアドバイスをいただいた。これまでお付き合いのなかったところと、新たな取り引きが生まれそうだ」と手応えを語った。2月21日から28日まで開催するDWKでは、こうした海外企業・デザイナーを積極的に京都に呼び込み、地場の作り手とのコミュニケーションやコラボレーション創出を促す。