ニューヨーク、ロンドン、ミラノに続き3月1日、2016-17年秋冬パリ・ファッション・ウイークが開幕した。9日まで、公式スケジュールだけでも約90ブランドがショーやプレゼンテーションを行なう。初日はもともと新人・若手デザイナーのショーが多く行われていたが、昨シーズンからスケジュールが大きく変わり、ラインアップがより充実した。今季の初日は、2016年度LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ(LVMHプライズ)のセミファイナリストにも選ばれた「コーシェ」「Y/プロジェクト」「アアルト」の3ブランドのクリエイションが冴えた。共通項は"ストリートの感覚"だ。
昨年度もLVMHプライズでセミファイナルまで残った「コーシェ」のクリステル・コーシェは、「ボッテガ・ヴェネタ」や「ドリス ヴァン ノッテン」「クロエ」などで経験を積み、現在は羽細工で知られるオートクチュール工房の「ルマリエ」のアーティスティック・ディレクターも務めている実力派だ。昨シーズンの地下鉄レアール駅に直結した地下街に続き、彼女が会場に選んだのは、さまざまな文化が混じり合う10区の古びたパッサージュ(アーケード街)。疾走感のある音楽に合わせ、身長も国籍もさまざまなモデルが足早にそこを通り抜けていく。そんな全体的な見せ方にもセンスが垣間見える。コレクションは、今季もクチュールテクニックをストリートウエアに応用。ジャージーやデニム、メッシュなどカジュアルな素材に、ベルベットやサテン、シルクを合わせ、さらに、そこにビジューや羽根、フリルをのせて、ラグジュアリーなドレスやコートを仕立てている。ただし、ベースはあくまでカジュアルウエア。コーディネートにもオーバーサイズTシャツや太めのスエットパンツなどを取り入れて、日常着として提案している。
ベルギー人デザイナーのグレン・マーティンスがクリエイティブ・ディレクターを務める「Y/プロジェクト」は、初めてウィメンズ単独のショーを開いた。持ち前のアンダーグラウンドな世界観にヨーロッパの歴史的な装いに由来するディテールを融合。オルタナティブなエレガンスを表現した。キーアイテムは、大きく膨らんだビショップスリーブや首をすっぽり覆うラッフルを採用したトップスやドレス、過剰なほどに長いボトムス、再構築したミリタリーブルゾンなど。随所に散りばめられたリボンやボタン、ファスナーを駆使した「スポンテニアス」なアプローチも目を引く。
また、「ルイ・ヴィトン」のメンズのデザインチームにも属するトーマス・メリコスキが15-16年秋冬に立ち上げた「アアルト」は、今季も故郷フィンランドのカルチャーから着想。「HELLSINKI(HELLとHELSINKIの造語)」と題し、スカンジナビア半島北部のラップランドに住む先住民サーミ族の若者が都会に移り住み、現代的なライフスタイルの中にいかに自分たちの伝統的な文化を織り交ぜていくかというところからイメージを膨らませた。基本は、テーラリングアイテムやロングニットと、フーディーやブルゾンなどのスポーティーなアイテムのミックス。ロング&リーンなシルエットや同系色でのコーディネートが縦のラインを強調する。そこにアクセントを加えるのは、極端に低い位置に付けたコートのベルトや、後ろ身頃だけ長いニットの袖など。全体的にレトロなカラーパレットに加えた鮮やかなブルーはサーミ族の民族衣装からヒントを得たものだ。
■「コーシェ」2016-17年秋冬パリ・コレクションのルックはこちら
■「アアルト」2016-17年秋冬パリ・コレクションのルックはこちら