3月25日に開幕するプロ野球(NPB)のユニホームに異変が起こっている。アメリカ発のスポーツメーカー「マジェスティック」が4球団とユニホームのサプライ契約を結び、トップシェアに躍り出た。2014年から契約している東北楽天イーグルスを除き、福岡ソフトバンクホークス、埼玉西武ライオンズ、東京ヤクルトスワローズの3球団は今シーズンからの新規契約だ。NPBのユニホームは「アンダーアーマー」と読売ジャイアンツとの契約(15年)が話題になったが、数の上では「ミズノ」「デサント」「アシックス」など日本のスポーツメーカーの独壇場だった。14年から本格参入した「マジェスティック」が、NPBの3分の1にあたるユニホームをサプライする状況は、まさに"マジェスティック旋風"といえるだろう。
マジェスティックは1950年代にアメリカのペンシルバニア州で創業した。2005年にアメリカのメジャーリーグ(以下、MLB)全30球団のユニホームを一括製造するオフィシャルサプライヤー契約を結ぶ。現在はペンシルバニア州のイーストンに、約1500人が勤務するユニホーム専門工場を構えている。
日本では08年にマジェスティック ジャパンを設立後、MLBのロゴを使用したライセンスアパレルの流通などを開始した。14年には東北楽天イーグルスと、日本進出後初となるユニホームサプライ契約を締結した。松岡孝樹ベースボールディビジョン営業部長は「最初は球団側から『MLBのユニホームを作っているメーカーが日本にできた』ということで興味をもっていただいた。『マジェスティック』のビジネスモデルは、他のスポーツメーカーとは全く異なる。スパイクやバットも無いし、日本ではアマチュア向けのウエアも扱っていない。投資した金額は球団から回収するという考えで、セールスプロモーションや球場内の売り場作りに注力する。陳列什器はもちろん、ハンガー一本から見直していく。当社はアパレル出身者がほとんどで、アイテムをどう見せてどう売るかを考えるのが得意だ。売り場が良くなれば、それだけでファンサービスになる。そのビジネスモデルがファンを大切にする球団の想いと一致した」と話す。
東北楽天イーグルスは13年に初の日本一を達成したが、「マジェスティック」と契約した14年は最下位に転落。しかし、グッズの売り上げは約1.4倍に上昇した。その成功が大きな要因となり、16年には新規3球団との契約に至った。「たまたま前のメーカーとの契約が切れる球団と話がうまく進み、一気に3球団と契約ができた。しかし、1球団100〜120人いる関係者にユニホームを提供するのは大変なこと。普通のメーカーならやらない」と松岡部長は苦笑するが、"来たチャンスは絶対につかむ"という社の方針のもと、社員を増員し、商社を加えて供給部分のサポートを強化するなど万全の体制を整える。過去のノウハウを生かして、今シーズンから福岡ソフトバンクホークスと埼玉西武ライオンズのホーム球場の売り場を改装した。今後については「『マジェスティック』というブランドを有名にしたいという目的は全くない。まずは契約している球団に寄り添うメーカーとして、選手やファンに喜んでもらうことが第一だ」と謙虚に語る。来年春には、野球用としてはもちろん、ジムやランニング時にも着用できるオリジナルスポーツウエアを販売することも決定している。