2013年春夏シーズンにデビューし、ウィメンズウエアやバッグ、ジュエリー、プロダクトといったアイテムを打ち出した深川詔平「ONELINEDRAWING(ワンラインドローイング)」デザイナーが、ユニークなコンセプトで注目を集めそうだ。
「社会と対話したモノづくりをしたい」と語るように、衣服表現にとどまらず、独自の美観を表現するため、素材やディテールを駆使してファッションを表現している。10通りに着こなすことができるベストや、バッグにはスカラップ状にカットしたレザーを配し、セラミックを取り付けたクリエイションなども特徴だ。ウエア10型、バッグ10型、ジュエリー20型、プロダクト20型のデビューコレクションは、国内産地と共同で取り組んだ意欲作。伝統的な技術を採用し、モダンに表現した内容だ。
深川は「デビューシーズンは、百貨店やセレクトショップで売らず、アパレルではない異業種のオフィスに売り場を設ける。ゲリラ的というか、コレクションデザイナーやビジネスの慣習と違う提案をしたい」という。日本のファッション業界に一石を投じ、さらにプロダクトを含めた発信方法を模索している。
ウエアや服飾雑貨だけではない商品構成、受け身ではなく、自分で売り場を作るアプローチなど、考え方も独特だ。デザイナーとは何か、と自問自答し「このブランドでは、地盤産業の支援・協業もしていきたい。支援といっても事業的な支援ではなく、将来における自分のプレゼンを効果的に行うためのステージ作りだと思っている。それ自体が『ワンラインドローイング』のユーザーに対する直接的な価値にはならない。しかし、日本の伝統技術が失われるのは、間接的にデザイナーやユーザーの不利益につながる」。
深川は、有力デザイナーズブランドで企画やパタンナーなどを経験し、密度の濃いキャリアを積んだ。こうした経験が自身の礎になっている。「コンセプト設定やデザイン、パターン、生地開発、工場の開拓、縫製といった面だけではなく、ジュエリーやセラミック原型の彫刻、インビテーションを含む印刷物のグラフィックなども全て自分で製作している」という作品は、コンセプチュアルで力強いモチーフに溢れている。
ここまでデザイナーとして紹介してきたが「一般的には経営者、デザイナー、アーティスト、イラストレーターといった括りになるのかもしれない。しかし、それも全て『ワンラインドローイング』という活動で、あらゆる表現をしているだけ。しかし、これも周りの見方によって変わるものだと思う」という。展示会の有り方やビジネスの進め方、さらには産地との協業を考慮した発表スタイルは、現状にもがきながらも着実に歩みを進めている。