先シーズンの鮮やかなカラーパレットとロング&リーンのシルエットが印象的な70年代のセレブスタイルから一転、今季の「グッチ」はダークトーンで描く斬新なシルエットの構築美に挑んだ。
クリエイティブ・ディレクターのフリーダ・ジャンニーニのインスピレーション源は、60年代ポップアートの旗手としてアンディ・ウォーホルと並び称される英国人アーティストのアレン・ジョーンズ。半裸の女性マネキンを家具に見立てた「女体家具」などのフェティッシュで毒のある作風で知られるアレン・ジョーンズの官能的世界を、漆黒の光沢を放つパイソンとフェザー、アンドロイド風のボディコンシャスなシルエットや鎖骨を大胆に見せる胸元のVカットで表現している。
これまでシルエットを大胆に変えることに比較的慎重だったフリーダだが、今シーズンは緩やかなエッグシェイプを描く肩や袖のライン、スリットを配した膝下丈のペンシルスカート、ウエストラインを極端に強調したボディコンシャスなパンツスーツなど、オートクチュールに見紛う精緻なアトリエワークによって、ダイナミックな構築美を完成させた。イヴニングドレスはストレッチレースのメッシュ素材と光沢感のあるサテンに羽根や刺繍を叩きこみ、フェティッシュな官能美をポップアートのように描いてみせた。
カラーパレットは漆黒を軸に、パープル、ボルドー、ダークグリーン、セルリアンブルーなど深い色合いが中心。黒のパテントレザーやパイソンとともに、プリンス・オブ・ウェールズのチェック柄にレタッチを加えたモチーフ使いが印象的。
数日後には第一子を出産予定のフリーダは、大きなお腹を抱えてフィナーレに登場。彼女の革新的なチャレンジ精神を讃えて、満場の拍手が会場に鳴り響いた。