飛び出す絵本のようにステージの床が起き上がり、巨大なロゴが現れる演出で「フェンディ」のショーがスタートした。アップビートの音に合わせて登場したのは、カラフルなモヒカン風ヘアに深紅のリップを塗り、“攻め”の姿勢でキメた全身ファーのモデルたちだ。ファーは、ピンク、エメラルドグリーン、バイオレット、パープル、オレンジ、レッドなど、まばゆいばかりに色鮮やかに彩られ、これほどまでにリュクスなファー素材を色でパンクに遊べるのは、カール・ラガーフェルドしかいないだろうというほどの迫力だ。
それらのファーは、ストライプ、カラーブロッキング、編み込みといった、あらゆるパターンで構成され、コートのボリュームと相まってかなりのインパクトを放つ。遊び心は細部にまで行き渡り、シューズの縁やサングラスのリム、首にまでファーが巻かれている。カラーブロッキングのファー・バッグには、ファーのチャームが付いている徹底ぶりだ。ブルゾンのライニングやサスペンダーにもファーがあしらわれ、重たくなりがちなファーがポップにアレンジされている。
ボトムスには、タックを入れて膝まわりをたっぷりとさせたパンツを合わせ、トップスに負けないボリューム・バランスを描いている。シューズは太めのメタリックヒールにすることで、全体のコーディネートを引き締める役割を担っている。すべてのバランスが計算された、余裕すら感じる圧巻のショーだ。
これほどまでにファーを打ち出した背景には、「フェンディ」のこれまでのクリエイションの軌跡を披露する回顧展が開催されることも大きく関わっている。「UN ART AUTRE」と題した回顧展は東京を皮切りに4月から世界を巡回するという。1925年にエドアルドとアデーレ・フェンディ夫婦がローマで毛皮工房併設の皮革製品点をオープンしたことでスタートした「フェンディ」にとって、毛皮は創業以来受け継がれてきた歴史そのもの。そのファーの革新性を見せつけたカール・ラガーフェルドは、観客から大きな拍手喝采を浴びていた。