会場の全方位の壁には、部屋にいる女性や猫のシルエットが描かれた映像が映しだされている。登場したモデルたちは、シャワーを浴びたばかりのような洗いざらしの濡れた髪に赤いリップ。ワンピースの中に合わせたニットは、前のボタンがとれ、肩がはだけている。ルーズに羽織ったコートやサスペンダーは、今にも肩から落ちそうだ。アンニュイな雰囲気は、まるで物語のワンシーンのようだ。
今回のコレクションで特徴的なシルエットのひとつが、袖口のボリューム感。ウールコートの袖口には、カフスをさらに大きくしたような袖が付いていたり、異素材のファーがあしらわれたりしている。この“袖口ボリューム”は、ほかのショーでも多く見られ、ミラノのトレンドのひとつになりそうだ。
また、Aラインのフレアなコートやワンピースも「プラダ」が提案したことで、トレンドとして決定的になったと言えるだろう。淡いブルーやピンクのギンガムチェック柄をのせると、さらにクラシカルな装いだ。それらにシルバーやゴールド、ターコイズブルーのメタリックなベルトやボリュームのある厚底のヒールを併せることで全体にメリハリを付けている。ギンガムチェックはボストンバッグでも登場し、ヒットアイテムになりそうだ。
もうひとつのキーとなるのは大胆なストライプ柄のツイード・ドレス。ブルーと赤、黒と茶などのパターンで提案している。ツイードスカートのサイドや胸元など一部分に黒のビジューを合わせ、重くなりがちなツイードにゴージャス感を加えている。このビジュー使いも、カラーやボリュームを変えて多くのブランドで見られたアプローチだ。差し色としてシューズやジャケットのポケットを赤や水色にすることで、ぐっとアーティスティックなアプローチとなる。
前回のジャポニズムから着想を得たコレクションと比べると、コンセプチュアルでありながらも、実際に着こなしやすいアイテムが豊富に揃っている。完璧と不完全、可能と不可能、革新と保守、リッチとプア。ひとつに括るこのできない概念を内包しているかのようなコレクション。それは1人の女性の内面にも当てはまる。独自性を貫きながらも、トレンドを牽引するミウッチャ・プラダの真髄が色濃く反映されたコレクションだ。
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