創業デザイナー、ジル・サンダーが待望のカムバックを果たして2シーズン目のウィメンズ・コレクションとなる今シーズン。もともと最初の退任劇の直前に完成したシンプルでモダンなショー会場の中央には、ダイヤモンドのファセットを思わせる多面体のオブジェが配されていた。数学者ブノワ・マンテンブロのフラクタル理論や建築家オスカー・ニーマイヤーの曲線美に着想したというコレクション作品は、シンプルなソリッドカラーのアイテムを組み合わせて、元祖ミニマリストの本領を発揮した。直線と曲線を絶妙に組み合わせたスラッシュやシームラインを駆使した複雑なパターンが、マスキュリンとフェミニンさをミックスした造形的なフォルムを生みだす。
得意のダブルフェイスによるフェルト素材やボンディングしたレザー、プリントを施したカシミア、ニードルパンチしたアンゴラなど、肉厚でありながらデリケートな素材が身体を優しく包み込む。黒やネイビーを中心に、オレンジやスカイブルーなどのヴィヴィッドカラーや、カモミールやサフランのオーガニックカラー、クールな印象のスレートグレー、官能的な光を放つ襟元のゴールドといった独自のカラーパレットが、ひとつのルックの中で静謐なコントラストを描いている。先シーズンより若干肩の力が抜けたことで、ジル本来のスタイルが完全復活した印象のコレクションだ。
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