パリに入ってからのトレンドの1つに、シュールレアリスムがある。20世紀に芽生えた「超現実主義」と称される芸術で、複雑になった社会で生きる人間の、不安な心のうちなどを描くムーブメントのことだ。今シーズンは、「ディオール」から「アンダーカバー」「ポール カ」に至るまで、様々なブランドに広がっている。
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「ケンゾー」は、東南から南アジアにかけての寺院にインスピレーションを得て、その寺に飾られ四方八方を見回している「目」にフォーカス。"カワイイ"を体現してきたブランドらしく、時にキッチュに「目」を様々な方法で洋服にのせ、"キモカワイイ"シュールレアリスムを探索。全体的にはグレードアップを図り、マチュアな女性さえターゲットにしようと画策している印象だ。アジアに着想を得たコレクションは、これまで西洋人の手に掛かるとエキゾチックな「オリエンタリズム」に帰着しがちだったが、アジアの血を引くキャロル・リム&ウンベルト・レオンの手にかかると、それが自然とモードに融合していく。これまで「ストリート性」や「カワイイ」が最大の武器だった「ケンゾー」に、「アジアンカルチャーとモードの自然な融合」という新たな一面が加わろうとしている。
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まず序盤は、「目」をゴールドのジャカードで。ドロップショルダー気味なハイブリッドプルオーバーは、ストリート世代の2人にふさわしいアイテムだが、スキニーパンツやラップスカート、そして袖をバッサリとカットしたようなノースリーブトレンチなどは、今までにないハードなアイテムだ。アジアの女闘士のイメージという。
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その後、「目」はグログランのリボンにのせられ、マルチボーダーのアイテムに。男勝りなシルエットのチェスターコートにあわせるスリムパンツや、やはりここでもラップスカート、そしてノンシャランなワンピースなどにのせられる。その後は、クロコダイル柄をエンボスで描いたコートやボリュームブルゾンに。シュルレアリスムのモチーフを帯に落とし込み、それを胸の前で交差することで仕上げるドレスにアレンジ。多少ハードエッジな気がしはじめると、スカイブルーのフェイクファーコートや縫い代を表に出すことでカーヴィーなラインを強調したフリュイド(風に流れる)ドレス、ムース素材のシンプルなスウェットなどを挟み、単調に終わらせないのは、小売りも手掛ける2人のMDバランスによるものだろう。
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