「リック・オウエンス」のショー会場に集まる、コアなファンは黒でまとめたハードなスタイルが大多数だ。今シーズン、彼らの上に降り注いだのは、白くてふわふわとした大量の泡で、ショーが終わるころには頭上の高さにまで降り積もっていた。それはリックオウエンスが“柔らかさ”や“軽やかさ”の提案にいよいよ本腰を入れる、そんなメッセージなのかもしれない。シャンプーハットのような髪形のモデルが着るのは、美容院で髪を切る時に身体をすっぽりと包むビニールのような服。首元にギャザーを寄せてボリュームを作り出し、身体をふんわりと包み込む。
中盤以降は、引き続き柔らかかったり、透けたりといった素材感を大切にしながら、それを黒ではなく、グレーや淡いピンク、エクリュやゴールドに染めて「リック・オウエンス」独特のフォルム(肩を張り出したり背中に丸いボリュームを持たせたり)に落とし込んでいる。「リック・オウエンス」が次のステージに進むためには、黒い服でまとめたファン層に、今シーズンのテイストが受け入れられるかどうかにかかっている。