「ロエベ」が今シーズンのインスピレーション源にしたのは、スペインが生んだ偉大な芸術家サルバトール・ダリの妻、ガラ・ダリ。フランスの詩人ポール・エリュアールと結婚するために故郷ロシアを離れ、画家のマックス・エルンストと恋仲になり、やがて奇才サルバドール・ダリと結婚したガラは、当時の芸術家たちの創造力をかきたてるミューズだった。「ロエベ」のクリエイティブ・ディレクターを務めるスチュアート・ヴィヴァ—スとデザインチームの面々は、今季の作品制作にあたってダリが住んでいた“卵の家”があるスペインの漁村カダケスにリサーチ・トリップに出掛けたという。
フラメンコドレスに使われるスペイン伝統の手編みレースやフリンジスカーフ、イベリアン・バロックのモチーフなどを随所に使い、最高級のナッパレザーやスエード素材にカットワークやパンチングを施したコレクションは、老舗メゾンのルーツを継承しながら、モダン・クラシシズムに昇華している。宗教画のようなフーディもミステリアスな官能美を描く。スチュアート・ヴィヴァ—スがコンセプトとして掲げている「ガラ・ダリの実像に迫りながら、その生き様を現代女性に置き換えたコレクションは、伝統の職人技が冴えるアトリエワークと緻密に計算されたスタイリングによって、品格ある新鮮なエレガンスを生んでいる。