スイス・ジュネーブで20日・月曜日から始まった高級時計の展示会SIHH(国際高級時計展)は各国のジャーナリストの姿こそ少なかったが、例年とは違 い最終日である24日金曜日まで会場に人が溢れ、改めてリーマンショックを乗り越えた、世界の高級時計市場の好調ぶりが伺えた。
この状況に応えて、各社の超高額モデルも充実している。独自のメカニズムで機械の美を追求する複雑時計の世界では、今年は"宇宙"が隠れたメインテーマだ。
「ヴァン クリーフ&アーペル」は、メカニズムと宝飾の魅力を兼ね備えた"ポエティック コンプリケーション(詩的な複雑時計)"のシリーズで、太陽系の天体とその動きを高貴な材料と伝統の装飾儀容で、そのまま文字盤上に3Dで再現した「ポエ ティック アストロノミー」を発表した。太陽を中心に水星、金星、地球、火星、木星、土星まで文字盤上にはそれぞれ異なる貴石で作られた7つの惑星が配置され、それ ぞれの周期に合わせて回転する。ターコイズ製の地球は1年間で1回転。最も外側にあるスギライト製の土星は何と29年半で1回転。そして時刻は24時間で 文字盤を1周する、土星の外側の彗星の尾の部分で読み取れる。また地球の軌道上にはラッキースターがあり、文字盤最外周のカレンダーを使って自分だけの ラッキーデイを設定・表示する機能も備えている。"腕に着けられるプラネタリウム"といえる、夢のあるモデル。
「カルティエ」は月、曜日、日付の表示ディスクをローマの円形劇場のように同心円状に立体的に配置し、驚くほどカレンダー情報が読み取りやすい永久カレ ンダー&トゥールビヨン機構搭載モデル「ロトンド ドゥ カルティエ アストロカレンダー ウォッチ」を発表した。そもそも暦、カレンダーは宇宙の構造の解析と再現しようという試みから誕生したものであり、太陽系や銀河系の構造を彷彿させるこの 表示は永久カレンダー機能の本質を反映した画期的なものといえる。カルティエの卓越した技術力を証明する逸品。
ドイツの最高峰ブランド「A.ランゲ&ゾーネ」は、永久カレンダー機構に加えて、北半球から見た地球と月、そして太陽の関係を常時表示する"軌道ムーン フェイズ表示"と呼ばれるまったく新しいムーンフェイズ表示を備えた「リヒャルト・ランゲ・パーペチュアルカレンダー"テラ・ルーナ(地球と月)"」を発 表した。この表示機構はシースルーバックケースの裏側にセットされているので、表からの外観は非常にシンプル。この点も、ドイツのブランドらしい。