ユナイテッドアローズの創業者である重松理・名誉会長がプロデュースする専門店「順理庵(じゅんりあん)」が4月5日、銀座のソニー通りにオープンする。わずか8坪(約26平方メートル)ながらも本格的な数寄屋造りで、床の間を備えており、地中に2000年近くも埋もれていた神代杉をはじめ、神代楡(にれ)、肥松(こえまつ)、鹿子(かご)の木など、希少性の高い木材を多用しているのが特徴だ。「すがすがしくて、気が良い店が出来上がった。木と土壁でできた家や、その中にある日本の生活がいかに気持ちの良いものであるか、体感しに来てほしい」と重松名誉会長。
商品は、衣料品と生活雑貨で構成。京都の帯匠「誉田屋源兵衛」十代目山口源兵衛氏がプロデュースした「檸檬草」の手織生地を中心に、織り手の名前が記された結城織りや米沢織りなどのシルクの織物を用意。既製品では縫製も全て日本国内の協力工場で生産した、メンズとウィメンズのジャケット、ワンピースなどを扱う。生地や反物を選び、洋服や着物などをオーダーメードであつらえることもできる。生活雑貨については、総合監修やしつらえも手掛けた、泰山堂の村尾泰助氏がプロデュースまたはセレクトした木工品や漆器、器などを扱う。重松名誉会長の個人会社オスカーが企画・開発し、販売・運営については、ユナイテッドアローズがサポートする体制を取る。
重松名誉会長は「男女の複合店であり、和装と洋装の複合店というのは珍しい。和装を愛用してきたが、織物を使ってジャケットを作ることなどにより用途を広げることで、伝統的なものやその技術を残したり、織り手の方々のやりがいにつなげたり、後継者の育成などにつながればと考えた」と話す。機械織りのシルクを使った既製品は、ジャケットで12万円、ワンピースで15万円など。ましてや、手織りの反物などは20万〜40万円近い価格で、決して安くはない。ジャケットなどをあつらえるにしても高額になるが、「これまでは多くの人々に喜んでもらえる仕事をしてきた。この店では、独自の価値観を持った方々に『よろしければお楽しみくださいませ』と、今までとは異なるアプローチでお客さまの満足度を拡大したい。手織りの布の風合いや、織り手の魂を感じることが好きな方々にお買い上げいただければ」と想いを語る。
目指すのは、「絶対的価値感の追求」だ。「ファッションでは、ランウェイやストリートなどを見ながらトレンドを追い掛けると、どうしても同質化してしまうし、相対的な価値感ということになる。この店では、絶対的価値感の追求に挑戦してみたい」と話す。
ちなみに、このタイミングでオープンしたことについては、銀座のソニー通りという好立地の物件に出合ったことに加え、2016年は重松名誉会長が小売業に携わってから40周年という節目の年であることも大きく影響している。「ユナイテッドアローズを含め、西洋と東洋の融合を目指し、西洋のものを多く紹介してきた。やってきたのは、紹介業だと思っている。今後は、日本古来の伝統や良いものを伝えることに力を注ぎたい。京都・鷹峯に建設中で、18年春に完成予定の『洛遊居』は、『日本の真正なる美の基準を次世代に継承すること』をコンセプトにした、文化事業だ。こういうことは、個人でなければできないこと。日本の良さを体感する『真正・和のディズニーランド』を目指したい」と意気込む。
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