「クリスチャン ディオール(Christian Dior)」の2014年春夏オートクチュール・コレクションは、ひざ丈やショート丈のシルクドレスのオンパレード。アーティスティック・ディレクターのラフ・シモンズは、そのほとんどにカットアウト、生地を切り抜き、ドレスの下の生地、往々にして肌を見せるセンシュアルなコレクションを発表した。カットアウトで肌をチラ見せするのは、半年前の同じシーズンのプレタポルテ・コレクション同様だ。
しかし、ラフはただプレタのトレンドをクチュールテクニックで表現したワケではない。そこには、ロマンティックなストーリーが込められている。それは、「クチュールの秘めたる世界」。今でこそクチュールは、メディアがそれをショーとほぼ同時に世界に発信するなど、さすがに着ることは叶わなくても、見て知ることはできる存在になったが、それでもラフは、「顧客とメゾンには、他の誰にもわからない感情的な関係が潜んでいる」とクチュールの神秘性にフォーカス。実はカットアウトした生地は、身頃と完全に切り離さず、たとえば半円の外周部分だけを切り抜いたり、ほんの一部だけを切り取らず身頃にかろうじてつながっているようにしたり、もしくは一度は完全に切り取っても再び花のエンブロイダリーで一部を再度つなげてみたり。こうしてカットアウトした生地を取り除くのではなく、一部を残すことでドレスの下の生地や肌が露骨にあらわになることを回避。"目を凝らせばドレスの下が見える。でも、注意深く凝視しないと見えない"さまを、"広く知られているようだが、それでも顧客とメゾンにしかわからない深遠なる絆がまだまだ存在する"クチュールの世界になぞらえた。もちろん、ごく一部でつながるカットアウトされた生地は、歩くたびにヒラヒラ揺れ、ドレスを3次元の芸術に昇華させている。"不完全なカットアウト"は、戦後間もなく、完璧とされていた既存のフォルムに手を加え、新たな美を生み出したムッシュー・ディオールへのオマージュでもある。
もう一つの大きな特徴は、クチュールを現代女性のリアルに落とし込む挑戦だ。引き続き、ドレスの大半は快活なひざ丈。パンツルックも数多い。クラシックなバージャケットは、同じフォルムのカットワークドレスに生まれ変わり、新たな命が吹き込まれた。そして足元は、ガーターベルト付きのパンプスか、花のビジューを全面に散りばめたスニーカー。ビジューやスパンコールを最小限にとどめつつ、手の込んだ繊細なカットワークで、クチュールに必要な美を保つスタイルを披露した。
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【クリスチャン ディオール?2014年春夏パリ・オートクチュール?全ルック】
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