クリスチャン ルブタン ジャパンは12月4日、東京・青山に国内7店舗目になる旗艦店をオープンした。オープニングに合わせてデザイナーのクリスチャン・ルブタンが来日。「WWDジャパン」では、旗艦店やクリエイションの源流についてインタビューを行なった。ここでは本誌では紹介しきれなかったインタビューの完全版を3回にわけてお届けする。
ーーそもそも、なぜシューズだったのか?
クリスチャン・ルブタン(以下CL):小さい頃からシューズのスケッチをしていた僕にとって自然な流れでした。本格的にデザインスケッチしたのは12、13歳の頃。ショーガールのための靴だった。彼女たちは、極楽鳥のようでとてもエキゾチックで。ジャングルにいる鳥とステージにいる鳥(女性)。どこが違うのか?を考えた時に、靴だと気付いた。その靴をデザインして、彼女たちをよりエキゾチックにしたいと思ったんだ。けれど10代後半、キャバレーで見習いをしている時に、コスチュームは可能だけど、シューズだけではニッチな世界だと知った。それは自分が思っているよりもとても複雑であるとね。
ーー本格的なデザインスケッチはどんな靴だった?
CL:とても高いヒールの靴。1950年代のアルフレッド・ヒッチコックが手掛けた映画『めまい』に登場する女性が履いていた靴にインスパイアされてデザインした。そして、その時に描いた靴のソールの角度を常に意識してデザインしている。
ーーショーガールのためのシューズ。パリならではのストーリーですね。
CL:私はパリで生まれ、演劇やショー、映画が身近にあり、観られる環境にあった。70年代半ば、友人とつるんでは、シアターに潜り込んでいたんだ。演劇はたいてい2部構成で、その休憩中に観客が煙草を吸うために外に出る。そして、席に戻る時、誰もチケット確認をしないこと、戻った観客は一部で座っていた時の席とは違うところに座ることに気付いた。だから僕たちは潜り込んでは、ステージの前に座り、頻繁にショーを観ていたんだ。ミュージカルや映画は1部、2部と物語が繋がっているので2部から観てしまっては、前半部分を想像しなければいけなかった。それはそれで想像力を鍛えるにはとても良かったけれど、とても疲れる(笑)。その点、ショーは1部と2部のストーリーが繋がっていないから物語を理解するのが簡単だった。だからやはりショーの方が面白く感じたんだ。
ーー美しい靴はたいてい履きにくいが、「ルブタン」の靴は美しくても履きやすい。
CL:ショーガールはパフォーマンスをしなければいけない。靴は衣装の一部であり、ある程度衣装の兼ね合いも考えなければいけないので、美しくある必要がある。10cm、11cmのヒール高の靴を、ナチュラルにフィットしながら、スニーカーを履いているように楽に履けるのがとても重要。だから彼女たちは、一番履き心地が良くなるためのとっておきのトリック知っていた。カルパッチョさ。私がキャバレーで見習いをしていた時、よくカルパッチョを買ってくるように頼まれた。なぜ、彼女たちがそんなにカルパッチョをたくさん食べたがるのかと不思議に思い聞くと、カルパッチョを食べるのではなく靴の中に入れるのだと教えてくれた。彼女たちは生の白身魚を靴のつま先部分に敷いて履いていた!赤身だと、体重がかかり白いサテンに着色するから、白身の魚だったんだ。そこからヒントを得て、今では必ず靴の中にクッションを敷いているよ。ショーガールから得た知識は私の靴に数多く反映されているんだ。
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