現代音楽の巨匠テリー・ライリーは、約10年ぶりとなる来日ライブをアートスペースのトロット(東京・東雲)で11月22、23日に開催した。巨大倉庫を使用した会場は、壁面スクリーンを使った映像や客席なしのスタンディング形式と一風変わった演出。ライブが始まると、映像作家の寒川裕人が手掛けた映像が壁面に観客を取り囲むように映し出された。戦時中や自然の風景は、YouTubeなどで生成されている動画を出来事や日付けをもとに組み合わせてたプログラム映像。演奏は、「In C」「The Harp of New Albion」から最新作まで、グランドピアノ、プリペアドピアノ、そしてシンセサイザーを用いた即興演奏が行われた。
ライリーは近年、自身の音楽と映像とのコラボレーションを行っており、2012年にはD・エイケンとのイベントを実施。その際は、キャメロン・ディアス、トム・ハンクス、ショーン・ペン、ジャック・ニコルソン、アナ・ウィンターら、世界の著名人が数多く来場したことでも話題になった。
ライリーはライブ後、「今回のコラボレーションは、観客の方々に寒川さんの映像から刺激やリズムを音楽とともに受けてもらいたかった」とコメント。また、寒川は「戦争など悲惨な過去の出来事は、ミニマル・ミュージックのリズムのように皮肉にも永遠に続く。だけどそれを止めるのが僕らのやらなければいけないという思い(アフター・ザ・ウォール)を表現した」と作品について語った。
ライリーは、フィリップ・グラスやスティーブ・ライヒと並び、反復の旋律を用いたミニマルミュージックの第一人者。日本においても久石譲やYMOをはじめとした著名音楽家やダンスミュージックへ影響を与えたことでも知られている。日本及び海外での公演を控えていた79歳のテリー・ライリーにとって、最後の来日公演となる可能性から、ノイズバンド非常階段のJOJO広重ら業界人も足を運んだ。