「コスチューム ナショナル(COSTUME NATIONAL)」のデザイナー、エンニョ・カパサがアストンマーティン100周年記念特別車の発表と併せて、自身がプロデュースするワインのお披露目のために来日した。
会って話をすると、数年前よりも精悍でエネルギッシュな印象を受ける。「実は2年半前からベジタリアンなんだ。身体が肉を必要とせず、野菜だけの方がエネルギッシュになれるから」。6年前には南イタリア・プーリアに伊ファッション業界のご意見番でもある兄と共同で土地を買い、自らワイナリーを設計。ワイン作りを猛勉強し、3年前から製品化している。ラベルにブランド名を入れないのは、「ワインとファッションは別。どちらも本気だから」と力が入る。
「ジョークのつもりで始めたけど、今はいたって真剣。ワインは香水みたいなもので、触らずとも香りを嗅ぐだけで気分を変えることができる、人生そのものだよ」。化学肥料に頼らず、収穫した最高級のブトウは選りすぐって1/3しか使用しない。実はそんなところに服のデザインの経験が生きているという。「ファッションは人生の学校みたいなもの。毎日、美と品質について考える。だからファッションビジネスに携わることはとてもラッキーだと思う。どんな業界に転職しても磨いた審美眼が役立つからね(笑)」。
9月には日本に滞在していたころの体験を題材にした本も出版する予定だ。「日本にいた3年間はインターネットもない時代だったから、それは刺激的だった。新しいプロジェクトに取り組み刺激を受けることは私にとっては重要。ファッションデザインは、社会と深く関わっているから、社会の変化には常に敏感でいたいんだ」と話す。