会場の中も外も花がいっぱい。決して高価なものだけではないが、色とりどりの花々が道行く人や来場者を豊かな気持ちにさせる。それは「マルニ(MARNI)」が4月に東京・南青山のライトボックススタジオ青山で開いた「マルニ・ブロッサム・マーケット」のことだ。会場は、ブランドに欠かせない花や植物、アーカイブのプリント、動物のオブジェなどで飾られ、さまざまな限定アイテムを販売。アクセサリーやTシャツのカスタマイズコーナーやお絵描きコーナーも設置し、「マルニ」の世界観を存分に感じられる空間を作り出した。
同イベントは、ブランド設立20周年を記念したアニバーサリー・プロジェクト「マルニ・プリズマ」の一環で、昨年9月にミラノで開催した「マルニ・フラワー・マーケット」を皮切りにスタート。3月の香港での「マルニ・ルーフ・マーケット」に続く第3弾となる。会場には、デザイナーのコンスエロ・カスティリオーニと、彼女の娘で同プロジェクトのディレクションを手掛けるカロリーナ・カスティリオーニも来日し、連日入場待ちになるほどの盛況ぶりを見せた。
【スナップ】3日間限定の「マルニ・ブロッサム・マーケット」が開催 パーティーには長谷川潤や松岡モナらが来場 ▶︎
「そもそも『マルニ・プリズマ』を始動したのは、「回顧展のようなクラシックな祝い方ではなく、『マルニ』を違う視点から見せたかったから。イベントを通じて、新たな発見をしてもらいたい。だからこそ、表参道と言う都会の中にありながら、居心地の良い“隠れ家”のようなこの会場を選んだ」とカロリーナは話す。また、「このイベントは、常に何か新しいものを提案する『マルニ』のクリエイションのDNAそのものを表現しているの」とコンスエロが続ける。その言葉通り、イベントの随所にブランドのアイデンティティーが垣間見える。その一つが、ミラノでのイベントから一貫している子どもも楽しめるワークショップだ。「子どもにはいろんなことを経験して、思い出を作ってほしい。これまでもクリスマスの時期に世界の子どもたちから募集したイラストをショッピングバッグに用いる企画を行ったりしたが、子どもがクリエイティビティーを発揮する手助けをするのはとても重要なことだと思う」と語る。
もう一つは、コロンビアの女性たちと一緒にモノ作りを行うなど社会貢献への取り組みだ。今回は日本限定アイテムとして、福島の職人とともにアーカイブプリントの生地を用いた布ぞうりを制作した。また、イベントで販売した全商品の収益をチャリティーに寄付しているが、そこには「満たされていると感じられる私たちはラッキー。だから、何かが足りなくて困っている人を助けるのは当然のこと」という思いが込められている。
これまでの20年を振り返ると「時が経つのはとても速かった。けれど、自分たちが信じるものを貫いて、小さなステップを積み重ねてきたことで今を築くことができた。これからもその姿勢は変わらないわ。今は、娘や息子も一緒に働いてくれているし、私は本当にラッキーね」とコンスエロは微笑む。欲張りすぎることなく、今自分が置かれている環境を「ラッキー」と表現する心の余裕こそが、「マルニ」流の“豊かさ”につながっているのだろう。