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「サンローラン」は2月10日(日本時間11日)、エディ・スリマンのお膝元のロサンゼルスで2016-17年秋冬メンズと16年ウィメンズ・プレ・フォール・コレクションを発表した。会場にはレディー・ガガやレニー・クラヴィッツらのセレブまでが大挙。退任のウワサが浮上しているエディは、創業者のイヴ・サンローランがパリのセーヌ川左岸(リヴ・ゴーシュ)でプレタポルテラインの「イヴ・サンローラン リヴ・ゴーシュ」をスタートして50周年という節目の年に、メゾンへのオマージュと、自身が愛してやまないユースカルチャーに浸透するグランジをミックスし、集大成とも呼ぶべきコレクションを見せた。エディの去就についてケリングのフランソワ・アンリ・ピノー会長兼最高経営責任者(CEO)はショー会場のフロントローで、「まさに今、話し合っている。急ぐ必要はない。3月末までに結論を出せばいいんだ。今夜はメゾン、エディ、そしてLAを祝いたい」と話した。
エディが今回ショー会場に選んだのは、ロサンゼルス・ハリウッドのコンサート会場、パラディウムだ。1940年に誕生した歴史ある建物で、デヴィッド・ボウイを始めとする多くのミュージシャンがコンサートを開催してきた。音楽とは切っても切り離せないエディゆえ、今回のショーは、これまでの集大成なのではと“危惧”してしまう。約1600人が集った会場にはミュージシャンや俳優が続々と来場し、会場はさらに熱気を帯びた。
「もしかしたら、これがエディのラストショーになるかもしれない」という観客の思いのせいか、ショーのスタート前には拍手が沸き起こった。ショーにはメンズとウィメンズのモデルが交互に登場。メンズはエディらしいスーパースリムのレザーやデニムパンツに、ボウタイブラウスやフリンジ付きのライダースジャケット。加えて今シーズンはナポレオンジャケットやマントなどのユニホーム的な要素を取り入れている。ウィメンズは、ロックなミニドレスから、ミディ~ロング丈のスカートやガウチョパンツにシフト。シフォンのプリントロングドレスにベストや太いベルト、ブーツを合わせ、1960年代後半から70年代前半の「イヴ・サンローラン」をほうふつとさせるスタイルに続く。洋服には、「リヴ・ゴーシュ」のアーカイブプリント。メタリックなスパンコールや刺しゅうをふんだんに用いて、単なるエレガンスに着地しないのがエディらしい。
今年は「イヴ・サンローラン リヴ・ゴーシュ」50周年のアニバーサリーでもある。エディは「サンローラン」のロックな精神を取り戻したかったのではないか?そして、それが今できるのはパリではなく、LAだと思い、今回パリメンズをスキップしたのではないか?
その記念すべきタイミングで「サンローラン」を去るのか否か?それは現時点では定かではないが、これまでのエディの集大成、そして、ムッシュ・サンローランへのオマージュを感じさせるショーだった。ショーが終わるとスタンディング・オベーションでエディを待つ観客の前に、彼はワインレッドのジャケットを着て少し前かがみで現れ、小さく手を振った。髪は長い。その姿は、若かりし日のムッシュを彷彿とさせた。