7月1日夜にバングラデシュの首都ダッカで起きた飲食店襲撃テロ事件が、現地の縫製産業に与える打撃が懸念されている。バングラデシュには数多くの縫製工場があり、縫製品の輸出産業の規模は中国に次ぐ世界第2位の245億ドル(約2兆4745億円)に及ぶ。また縫製産業には400万人以上が従事している。ニューヨーク大学スターン・スクールのビジネス・人権センターのサラ・ラボウィッツ共同創立者兼コーディネーターは、「国内の安全はもちろん、経済への影響も深刻だ。ファッション産業がバングラデシュの経済成長を支えてきたが、今回のような襲撃事件がホリデーシーズンまでビジネスを停滞させると考えられる」と話す。
今回の事件を受けて、ファーストリテイリングは従業員に対し、7月中のバングラデシュ渡航を、やむをえない場合を除き禁止している。また、現地の日本従業員10人には自宅待機を指示した。同社がバングラデシュのグラミン銀行グループとの合弁で設立したグラミンユニクロは現在、ダッカ周辺に9店舗を構える。現時点では全店舗が通常営業を続けているが、7月5〜7日のラマダン明けの祝祭日には休業するという。
日本の繊維関連企業は、いずれも大きな混乱はなく、比較的事態を冷静に受け止めているようだ。工場が現在ラマダン明けの祝祭日期間で休みだったことも大きい。ファスナー工場を持つYKKは「休み明けに関しては工場の稼働に関しては事態を見守りつつも、特に(操業に関して)何か特別措置を取る予定はない。日本からの出張や渡航に関しては事前許可制にする。現地の従業員に関しては、人が集まるようなところには近づかないなどの注意を喚起している」という。海外企業と合弁の編み染めから縫製の一貫生産会社と小さな紡績工場を持つ東レは「いずれもマイナー出資であるため東レグループからの出向スタッフはいないが、従業員に被害はなかったと確認している。休み明けの13日に関しては、注意を呼びかけるものの、特に日本からの出張禁止の措置をとる予定はない」という。
MAYU SAINI
訳 山河清礼奈