REPORT
生きることの厳しさと喜びをアーティスティックに昇華
“イノセンス”“リスク”“コンフォート”そして“プロテクション”。これらは、プレスリリースに記されていたキーワードだ。今シーズンの“アーティザナル”コレクションは、ひとつの言葉では括ることのできない緻密で繊細、かつ大胆なガリアーノのエッセンスが一つ一つのルックに凝縮されている。
ファーストルックは、ネイビーのコットンシャツの上にオレンジの丈夫なマッキントッシュのジャケットを上下逆に羽織り、ベルトでホールド。歩く度に垂れ下がった両袖が揺れる。そして、災害時の防護服のようなシルバーのメタリックジャンパーに大きなリュックと帽子、足元は、膝の上まである長いラバーブーツ。
一方、クリスタルのブラをレイヤードした白いシルクのジャカードドレスは、ユージーン・ソレイマンによるヴィクトリアン調のヘアメイクとヘッドピースを着用し、エレガントでありながらも足元はソックスにサンダル。鳥が描かれたドレープの美しいサテンのオーガンザドレスには、サイクリングスーツのトップスを重ね、足元は“クロッグ”と呼ぶ、ぬかるみなどを歩くための木靴を模したシューズ。生きることの厳しさと、ロマンチックな瞬間を感じる生きることの素晴らしさ。現代のリアリティーとアファンタジー。それらを包括してアーティスティックに昇華するガリアーノの力量は、儚さを感じると同時に、どこか凄みさえ感じるコレクションだ。