カール・ラガーフェルドはフランス・パリのオペラ・バスチーユで公演中のバレエ作品「ブラームス=シェーンベルク・カルテット」の衣装とセットを手掛けた。7月15日まで8回にわたり公演される。同演目は振付師のジョージ・バランシンが1965年にニューヨーク・ステート・シアターのために制作したもので、楽曲にはシェーンベルクによるオーケストラが37年に演奏したブラームスのピアノ四重奏を使用している。
今回の企画は、公演を手掛ける舞踏家のベンジャミン・ミルピエの依頼により実現した。カールは着想源について、「ブラームスが生きた19世紀とシェーンベルクの現代性を対比させたかった」と話した。また、グスタフ・クリムトやヨーゼフ・ホフマンらによって1897年に結成された進歩的な考え方を持つ芸術家グループ、ウィーン分離派からもヒントを得たという。
女性のコスチュームのデザインは、コルセットのようにくびれを強調した腰のラインとあらわになった肩が特徴。そのいくつかには、ヘッドバンドやアームバンドが作り出すグラフィカルなエフェクトを反映した黒いリボンの装飾があしらわれており、描き出されたストライプやスクエアは、ホフマンやコロマン・モーザーを連想させるデザインになっている。衣装は「(ホフマンとモーザーが設立した)ウィーン工房に着想を得た」とカール。男性の衣装は白タイツと格子柄のスエードのベスト、ベルベットの燕尾服で、それらを含めると約100着のコスチュームを考案したという。
いにしえの中央ヨーロッパをイメージさせる城のセットは、カールが一からデザインしたもので、建築に対する知識の深さが窺える。巨大なカーテンもセットの見どころの一つで、スモーキーな背景と同じく、幻想的な雰囲気を高めるため、生地に色が塗られている。
ミルピエはカールについて「これまで多くのデザイナーらと仕事をしてきたが、彼は非常に徹底的に、真剣に取り組んでいた。膨大なリサーチをしており、素晴らしいの一言に尽きる」とコメント。バレエの4つの動きを想定した衣装についても、「とてもグラフィカルで美しい。ダンサーの動きが生きている。チュチュにはシンプルだが今まで見たことがないアイデアが採用されている」と話した。
Miles Socha
訳 WWD編集部