ファッション

「マイケル・コース」2017年春夏ニューヨーク・メンズ・コレクション

REPORT

これがトレンド咀嚼力 MKメンズ、NYを何歩もリード

ニューヨークは、つくづくビジネスの街だ。地元の雑誌編集者、そして在住の日本人ライターは口々に、「トレンドは発信するというより、受信する側。それをコマーシャルに変換する能力に長けている」と話す。

確かに、その通りだ。しかし表現に限りのあるメンズでは、トレンドを受信し、コマーシャルに変換するだけでは個性に欠け、デザイナーズブランドにあるべきアイデンティティは生まれない。そして、それこそが3回目を迎えたNYメンズ最大の課題。コマーシャルに走りすぎるブランドがあまりに多く、アメリカ国内のバイヤーやメディアには一見の価値があっても、国外の関係者は正直、NYメンズを見る意義を見いだせていない。ファッション・ウイークとしてのNYメンズは、3回目と始まったばかりにもかかわらず、すでに停滞期を迎え、スケールダウンしている印象が否めない。そんな中、「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」が気を吐いた。

「マイケル・コース」だって、コマーシャルを無視しているワケではない。むしろどこよりもそれを意識しているからこそ、今の地位を築いているのだろう。他ブランド同様、今シーズンは、ユースのトレンドをしっかり取り入れた。いつの時代にインスピレーション源を得ても、当時の若者を思い浮かべ、彼らのカルチャーを取り入れることで、フレッシュな若々しさを味方につけるというマインドだが、そればかりを意識しすぎると、「クレイグ グリーン」風だったり、「J.W. アンダーソン」調に陥ったりしてしまう注意の必要なトレンドだ。しかし、「マイケル・コース」は、咀嚼の仕方が上手だ。自分にとってのアイデンティティであるアメリカン・クラシックやスポーツウエアに、どこまでユース的発想を取り入れ、アップデートするか?そのバランス感覚が冴えている。

彼がユースを取り入れるために意識したのは、柄と柄の組み合わせだ。とはいえそれは、自身のブランドとかけ離れたグラフィティーやモチーフではない。シェブロンやボーダー&ストライプ、ポルカドット(水玉)、それに小紋といった、伝統的なものばかりだ。色もネイビーとベーシック。ただそこに、柄を思いっきり加えることで、ユースならではの大胆不敵なマインドを盛り込み、クラシックをアップデートする。シェブロンはシャツとベストに、そしてポルカドットはタイに。ストライプは、丸めてクラッチのように持つトートに取り入れた。これを、上半身はロング&リーン、下半身はワイドなスタイルに取り入れ、プレイフルにまとめる。時折登場する、まるでテディベアのようなパイル調のニットは、クラシックよりもわかりやすくユースのマインドを表現し可愛らしいが、シャツ&タイと組み合わせるから、大人っぽい。

素材は軽量のコットンポプリンと、爽やかながらツヤっぽいリネンサテンがハイライト。薄くて軽くて、羽織るように着こなす「マイケル・コース」のアイデンティティはそのままだ。それをユースの感覚で、柄の多用でプレイフルに進化させる。トレンドに敏感すぎて、肝心のブランドらしさが築けないままでいるNYメンズの新人組には、学ぶことは多いコレクションだ。

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