REPORT
静と動を巧みに使い分けたベテランならではのダイナミズム
「ヨシオ クボ(YOSHIO KUBO)」が従来よりも開催時期を早め、東京・外苑前の秩父宮ラグビー場で2017年春夏のショーを行った。これまでシーズンテーマを設けてこなかった久保嘉男デザイナーだが、今回のコレクションでは「科学的・人工的なことを表現したかった」と語る。
序盤はテーラードとスポーツをミックスしたシンプルなスタイルを軸に、ベルクロ仕様のスニーカーで軽快さをプラス。ワイドやクロップド、デニムなどのパンツのバリエーションを見せた。ブラックやネイビーのルックが続いたが、中盤に突然目が覚めるようなネオンオレンジのブルゾンやカットソーが登場。さらにテレビ塔をモチーフにしたプリントを全面に施し、これまでの流れとは明らかに異質なアイテムを打ち出した。このインパクトこそ、久保デザイナーの言う“科学的・人工的の表現”だという。その後もシルバー、ゴールド、イエローなどをアクセントに、途中まで織ったジャカードをフリンジのように見せるディテールや、ハイテク素材とローテク素材を組み合わせるなど、持ち前のテクニックをふんだんに生かした大胆なテキスタイルを披露した。アイテムはシンプルながら「ヨシオ クボ」ならではのパンチ力は健在だ。フィナーレには花火のサプライズを用意し、歓声の中ショーは幕を閉じた。
久保デザイナーは、今回のショー開催時期の変更について「海外に出るための準備。それと、これまで自分が行ってきたリズムに疑問を感じた。ショーを発表してから展示会というのもおもしろいかなと思った」と語る。自らのブランドを12年続けきたからこそ改めて原点を見つめ直し、さらに自らを高めるためにこれまでとは異なるデザインや演出に挑戦することを決断した新生「ヨシオ クボ」を、フィナーレの花火が祝福しているようだった。