アダストリアはクリエイティブ・プロデューサーに谷川じゅんじJTQ(ジェイ・ティ・キュー)代表を起用する。売上高5000億円のグローバル企業を目指す中で、コーポレートブランディングの強化と、マルチブランド展開を生かしながら各ブランドのコミュニケーション戦略の立案・推進を託す。福田三千男・代表取締役会長兼最高経営責任者(CEO)は「アダストリアブランド自体の認知度・価値の向上を図ることが、マルチブランドの価値の最大化に繋がると考え、数々の実績を有する谷川氏の招聘に至った。今回の協働により、アダストリアの新たなCIをさらに浸透させ、企業ブランド価値の向上、認知拡大を図っていく」とコメントしている。
8月1日には、中目黒のJTQオフィスで木村治アダストリア常務と谷川代表が今回の経緯と狙いを説明。木村常務は「(ポイントとトリニティアーツを中心に)統合を繰り返して売上高2000億円の企業になった。5000億円、1兆円を目指すには、スタイルを変えないといけない。これまでの成功体験だけでは通用しない。谷川さんとは仲間を通じて知り合いさまざまな話をしてきた。レクサスや海外大手の仕事などをされている中で、コーポレートブランディングの重要性に気付かされた。アダストリアは2000億円も売り上げがあっても、誰にも知られてないという弱みがあった。日本市場だけでなく海外に出る際にも、知名度を上げ、信頼度を上げていかなければならない。帝国ホテルで行った創業60周年記念パーティの際に新生アダストリアを披露したが、その際に空間作りなどを仕切ってくれたのが谷川さん。そこから福田会長ともいろいろな話をしてきて、今回の起用に至った」と経緯を説明する。
企業のクリエイティブ・ディレクター(クリエイティブ・プロデューサー)起用については、「ユニクロ」を擁するファーストリテイリングの佐藤可士和サムライ代表の例が有名だが、「ロゴを変えたなど、分かりやすいところを目指しているわけではない。これまでは各ブランドを強くすしてきたが、会社の名前を強くしようという考えはなかった。谷川さんに、アダストリアが強くなった後で、ブランドが逆に強くなるよとアドバイスされ、気付かされた。もっとマルチブランドとしての強み、アダストリアをどうしたら違うステージにもっていけるか、長い時間をかけて、コーポレートブランディングをしていきたい」と話す。
谷川代表は、「私の仕事は、空間を構成するスペースコンポーザーだ。コンセプト、空間、体験、ブランディングを紐付けることで、アダストリアとブランドとをお客さまにとって必要なものにしていく。特にアダストリアはこれまで企業として外に発信してこなかったので、知られていない。アダストリアをフレッシュなブランドとして皆の前に存在感を示していく。その向こう側には慣れ親しんだブランドが多くあるという構図にする。『これってアダストリアだったんだ』という落とし方、浸透の仕方を図る。今、人々のライフスタイルは多様化し多層化している。複数のブランドを持つアダストリアにはすでにそれがある。地域や売り場によってローカルでフィットさせるなど、各々の立地や生活の中でフィットさせることもできる。価値をどうマーケットにコネクトさせるのか、より立体的に作っていければ面白い。コンテクストとコンテンツという考え方があるが、環境、プログラム、シチュエーションを併せて、体験価値をデザインし、ブランドの文脈を踏まえて構造化し、ターゲットコミュニティーに作用し引き付ける魅力として、マグネットデザインを創造したい」と意気込む。
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