トーマス:理解する顧客が少なかったのは事実だ。職人の工場環境や素材作りの生産背景を大切にし、一つ一つのアイテムがどういう状況で作られているのかを、顧客は商品を通してさらに知っていくだろう。顧客が安心して商品を選び、楽しく買い物できる環境を作ることが私たちの役目。単に美しいドレスやバッグを提供するということではなく、われわれや職人の思いを込めた商品が全て語ってくれているのだ。
WWD:熟練の職人技と普遍的なデザインが「ボッテガ・ヴェネタ」らしさであるが、そこを追求する理由は?
トーマス:「ボッテガ・ヴェネタ」のコレクションは、シーズンごとにドラマチックに変わるわけではない。このアイテムがあるから、必然的に次のコレクションのスタイルがあるという考え。ブランドとして“ラグジュアリー”の定義を考えることと同じで、コレクションはとてもパーソナルである。「ボッテガ・ヴェネタ」をまとう男性や女性が次のシーズンも同じアイテムを着続けることはとても自然なことだし、私たちも全く違うコンセプトで、服を作ることがないので説得する必要がない。必然的にこういうものが必要ですよねと提案する。もちろん例外的なこともあるので、顧客によってはシーズンをスキップする人もいるだろう。ただ、顧客が投資してくれることだから、長い間アイテムを愛用してもらうことが大事だし、私にとって重要なこと。それは例えば椅子と同じ。自分の好きなデザインを選んで、デザインや座り心地や空間に合うように悩んで購入する。それは一生もの。同じ感覚だ。
WWD:古いものを壊し、新しいものを作ることがファッションの今までの常套手段だが、葛藤することはなかったか?
トーマス:全てに対して基礎があった上で、あらゆるものを積み上げることが大事だ。われわれもワークショップやアトリエ、アーカイブを通してスタートし、未来を築いている。世の中が変わり、テクノロジーも進化しているが、どのように発展させるかを必ず意識している。例えば、人々の生活をより豊かにするために、革のコートを軽くしたり、必要のない縫い代をとったり。環境を向上させることが私たちのコンセプトであり、未来にチャレンジする原点になっている。
WWD:9月には初めてメンズとウィメンズの合同ショーを開催するが、その理由は?
トーマス:一番の理由はブランド設立と私の就任のアニバーサリーだからであるが、私としてはブランドにとって大切な職人たちを招待したかったから。ショーの考え方として、これまで来場者に細かいディテールも見てもらえるよう小規模の会場で行ってきたが、今回は会場を変え、職人たち自らが作ったコレクションをショーで見てもらう。就任当時は40人だった職人も今では400人いる。私にとって欠かせないメンバーだ。コレクションはこれまでと同じ努力と成果を見せるつもりだ。
WWD:今後の「ボッテガ・ヴェネタ」について、どのようなビジョンを描いている?
トーマス:これからも多岐にわたり、世の中で起こっていることや、われわれが関心のあるモノやコトを積極的にサポートしていく。また、将来のために教育や継承にも取り組み、正しい道筋を作っていきたい。地球環境も考えたい。例えば、サステナビリティーについて深く考え、単に店舗で販売していくことだけでなく、人々の哲学やアイデアに役立つよう貢献していきたい。
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