8月17日に行われたリオデジャネイロ五輪(以下、リオ五輪)・卓球男子団体決勝で、日本チームは銀メダルを獲得した。水谷隼・選手は過去12戦全敗だった世界1位の許シン選手に初勝利する大健闘。4年後の東京五輪に向けて期待が膨らむ好ゲームだった。
リオ五輪で注目を浴びたのは選手だけではない。ブルーの天板とカーブを描く脚が美しい卓球台"インフィニティ"だ。この卓球台は日本の技術の集大成ともいえる傑作。卓球台や木製遊具メーカーの三英(SAN-EI)と多くの名作家具を生み出す天童木工(TENDO)との協業で完成した。デザインはソニー(SONY)の"ウォークマン"などを手掛けた澄川伸一(SHINICHI SUMIKAWA)。天板は三英がこだわりぬいて北海道の自社工場で生産、脚の部分は成型による曲木の技術で知られる天童木工が製造した。
三英は12年のロンドン五輪での採用を目指して、新型卓球台の開発を進めていたが、11年の東日本大震災の影響で頓挫。リオ五輪に照準を移して開発を続け、日本発信ということで木を素材に選んだ。卓球台の制作には細かなルールがあり、鉄やアクリルが素材に使われることが多い。数ミリ単位の誤差も許されない卓球台を100%木で作るのは無理だろうと言われていた。なぜなら、木材は湿気や水分で変化するからだ。日本からブラジルに卓球台を運ぶ際、赤道直下を通過するためコンテナは高温になる。木製でありながら、それでも変形しない強さが必要とされる。五輪という世界の大舞台で使用されるには形状やデザインも重要。それらすべてを可能にしたのが三英と天童木工の技術、そして、澄川のデザイン力だ。
天板の深みのあるカラーは三英がブラジルの大自然、震災復興の新芽という思いを込めて開発した。脚の部分には被災した岩手県宮古市の木材が使用 されている。
三英や天童木工には、この卓球台に関する問い合わせが殺到している。リオ五輪で見せたメード・イン・ジャパンの実力に改めて注目してみたい。