[box class="clearfix"]
一番重要なのは経営者が女性が管理職に就くロールモデルを立てること
東京ウィメンズプラザで経営者に向けに開催された、女性のキャリアと子育てについて考えるシンポジウム
一般社団法人ウィメンズ・エンパワメント・イン・ファッション(以下、WEF)は3月31日、東京ウィメンズプラザで経営者に向け、女性のキャリアと子育てについて考えるシンポジウムを開催した。6回目になる今回は、キャシー松井ゴールドマンサックス証券副会長兼チーフ日本株ストラテジストとクリスティン・エドマンH&Mジャパン社長が登壇した。4月1日に施行した女性活躍推進法に伴い、ウーマノミクス(ウーマン+エコノミクスの造語で、女性の活躍によって地域を活性化すること)を推進するために女性および経営者が考え、行動すべきことについてパネルディスカッションを行った。生駒芳子WEF理事がコーディネーターを務めた。
[/box]
女性管理職が少ないのはなぜ?
コーディネーターの生駒芳子WEF理事
生駒芳子WEF理事 (以下、生駒) :安倍政権は女性管理職の割合を30%まで引き上げたいと掲げているが、女性管理職が少ないのはなぜだと思う?
クリスティン・エドマンH&Mジャパン社長(以下、エドマン) :まず、「私はできない」と思う女性が圧倒的に多い。特に日本の女性はね。それと、「やりたくない」と思う人もたくさんいるだろう。管理職に就けば責任も付き、仕事量も増えるので、きつくなるのが嫌で断る女性もいるんじゃないかと思う。それに対し、一番重要なのは経営者がロールモデルを立てること。管理職でなくても、周りに活躍している女性、目標となる女性がいるだけでモチベーションは全然違うはず。言葉で伝えるより、実例を出すのが一番効果的。
キャシー松井ゴールドマンサックス証券副会長兼チーフ日本株ストラテジスト(以下、松井) :正直、女性が前に出すぎるのは良くない、という考えが日本のみならず世界にあると思う。また、女性と男性で"成功"の定義は違うんじゃないかな?例えば、男性にとって成功とは管理職に就くこと、女性にとっては家庭を築くことかもしれない。
次ページ: シャイの改善方法 ▶
日本人はなぜシャイなのか?
登壇したクリスティン・エドマンH&Mジャパン社長
生駒 :日本の女性はシャイな方が多いと思うが、アドバイスをするなら?
エドマン :日本人は失敗を恐れる人が多いし、失敗を叱ることも多い。もちろん同じ失敗を2度するのはよろしくないが、失敗を恐れては何も生まれない。肝心なのは最初の一歩を踏みだすこと。それには上司も勇気づけることが大事。私も常に部下に対して何がやりたいのかをヒアリングしている。
松井 :勇気を出すことね。私自身、仕事を始めた頃は気に入った営業先だけ訪問していたことがあった。ある日上司に「あなたのやり方は間違っている。評価されないクライアントこそ、一番成長させてくれるのだ」と言われた。それ以来厳しい客の方が学ぶことが多いことを知った。やっぱりチャレンジがないと伸びない。子供のしつけと同じ。
エドマン:あと、日本の女性はもっと海外に行ってみるべき。海外に行けば、全く異なる環境、文化に触れることによってより広い視野を培うことができる。物事をさまざまな観点からとらえられるのはビジネスにおいても重要。だから、H&Mでは海外に行けるチャンスをたくさん用意している。
登壇者のキャシー松井ゴールドマンサックス証券副会長兼チーフ日本株ストラテジスト
松井 :経営者は部下を褒めることも大切よ。女性に多い「できない」というマインドセットはトレーニングでいくらでも変えることができるから。
エドマン :そうね。女性のマインドセットを変える必要があると思う。キャリアは自身で積むもの。自分から声をあげないとダメ。私がH&Mに入ったのは実は面白い話。スウェーデンに留学中、ビジネススクールの授業を現地の新聞記者が取材しに来た。その日の授業では1人1人が自分の夢をクラスにプレゼンしたのだが、周りが「社会を変えたい」「起業したい」と発表する中、私は堂々と「『H&M』を絶対日本に上陸させたい』」と話した。翌日私の発言が見事新聞記事の見出しになり、それをたまたま社長が読み、興味を持ってくれた。それをきっかけに入社し、その後日本市場の開拓を任せてくれた。まるでシンデレラストーリーのようだが、とにかく恐れずに何事もやってみることが大事ね。
次ページ:経営者として母親として仕事に育児に翻弄する二人のセオリーとは? ▶
仕事とプライベートのバランスが日によって違ってもいい
「仕事と家庭、ずばりどっちの方が楽?」と聞かれ「仕事(笑)!」と答えた二人
生駒 :2人とも子供を持つ母親だが、仕事とプライベートのバランスをどうとっているのか?
エドマン :プランニングすること!私の場合、1年間のスケジュールを毎年決めている。学校行事や家族旅行など家庭に割く時間をあらかじめ決めておき、そこに仕事は絶対入れない。台所に大きなカレンダーを置いているわ。
松井 :以前は、両方を完璧にこなそうと思ってストレスを感じることが多かった。でもあるときから、それぞれ100%の力を出し切ることが無理だと分かった。仕事とプライベートのバランスが7:3だったり、5:5だったり、2:8だったり、日によって違ってもいい。波があってもいい。完璧にこなすのではなく、均衡を保つこと。あとは、自分で全てをやろうと思わず、一部をパートナーに完全に託すこともOKだと知った。フレキシブルな心を持つことが大切ね。
生駒 :仕事と家庭、ずばりどっちの方が楽?
エドマン、松井 :仕事(笑)!
エドマン :育児は予想外なことがたくさん起きるから。思い通りにいかないことも多くあるわ。
日本と海外の産休に対する考え方の違い
生駒 :女性にとっては大事なトピックスでもある産休についてどう思うか?
エドマン :私が海外に行ってびっくりしたのは、海外の企業の産休の捉え方。日本だと妊娠報告を上司にすると「大変になる」と思う人が多い。でも海外だとみんな本当に喜んでくれる。"Oh my god!"ではなく"Congratulations!"が真っ先に言う言葉であるくらい。H&Mでは「ネクストミー(NEXT ME)」制度を取り入れている。産休など、職場を離れなければならなくなった時に自分の代理になれる部下を育てる制度だ。スタッフ全員行っている。そうすれば産休に入った時に自分の「ネクストミー」に仕事を頼むことができるし、その人もポジションが上がって成長できる。さらに、産休から復帰したときに、より優秀な人材が増える。産休をチャンスだと思える企業が増えることを願っている。
生駒 :最後に2人の今後のビジョン・メッセージを聞かせてください。
エドマン :私はとにかく日本で女性のリーダーを育てたい。H&Mでも常にそういった意識を持っている。日本人女性には「YOU CAN(あなたはできる)」を伝えたいし、そう思ってもらいたい。
松井 :仕事でも家庭においても、楽しめること、学べることを見つけることが大事だと思う。また、常に自分磨きをしていくことね。知り合いに聞いた面白い話は、自分のための"個人的取締役会"を作ること。自分を成長させるメンターやサポーターを好きなように選び、"取締役会"を作る。そういった人に囲まれることによりたくさんのアドバイスをもらい、吸収し続ける。そうすれば人生も豊かになるはず。