VERBALがディレクター、YOONがデザイナーを務めるジュエリーブランド「アンブッシュ(AMBUSH)」は9月2日、旗艦店「アンブッシュ ワークショップ(AMBUSH WORKSHOP)」をオープンする。場所は2015年8月に閉店したアメリカンアパレル渋谷メンズ館の跡地だ(東京都渋谷区渋谷1-22-8)。内装デザインは、片山正通ワンダーウォール代表が担当した。1階にショップ、2階にアトリエを構え、売り場面積は約125平方メートル。店内にはジュエリーを始め、アパレルアイテムやブックコーナー、店舗限定アイテムなどを並べる。コレクション発表から8年。ブランドの次のステージを目指す、VERBALとYOONに出店の背景について聞いた。
WWDジャパン(以下、WWD):出店に至った経緯は?
VERBAL:これまで音楽スタジオと一緒にアトリエを構えていましたが、「アンブッシュ」も年々スタッフが増え、音楽とファッションがだんだんと確立してきてことで、ブランドの世界観を独立して見せられる場所を探していました。リテールの経験がないので、同じ建物内にアトリエとショップを構えて、お客さんに近いところで脈を感じたいという思いがありました。それで、4年ほど前から渋谷・表参道界隈で物件を探していたのですが、なかなかピンとくる場所がなかった。
YOON:「自由に使える白いキャンバスみたいな空間がいいね」という話を2人でしていたのですが、ココなら自分たちの世界観も見せることができるのではと思い、出店を決めました。元々、渋谷・神南に事務所があって、住んでいるのもその周辺。自分たちのライフスタイルの中にあるというのがとても自然で、無理がないとも思っています。
VERBAL:ライブと一緒で、ファンの声を聞くことも大切だと思っています。今後は実際にフロアに立ったりしながら、お客さんの声を聞いてクリエイションに反映させていきたいですね。
WWD:ストアコンセプトは?
YOON:「ワークショップ」と名付けたのもジュエリーブランドのハイエンドなイメージに縛られたくなかったからです。英語で進行中を意味する「ワーク・イン・プログレス」という言葉が示す通り、実際にやってみて気づくこともあると思うので、什器も全て動かせる自由な空間になっています。完成された場所よりも少し未完成な部分を残すことで、お客さまに通ってもらいながら自然と雰囲気が変わっていく場所になると思っています。
VERBAL:片山さんは「アンブッシュ」の展示会へも最初のシーズンから来てくれていて、自分たちのクリエイションのこともよく理解してくれています。主張が強いアイテムなので、空間をシンプルにすることで、商品に目が行くようにデザインしてくださいました。
WWD:店舗では今後、特別なコトも行うのか?
VERBAL:出店の楽しみの一つが、「アンブッシュ」のカルチャーを発信できる場所ができたことです。これまではオンラインや展示会など限られていましたが、今後はスペースを活用してショップ限定アイテムの販売やトークショーなどのイベントもできればと思っています。
YOON:自由な空間なので、ファッションに限らず、周りの友人たちとさまざまなコラボも行っていく予定です。BGMは、コレクションの雰囲気に合う曲を友人に作ってもらいました。コレクション以外のスペースを設けることも大切だと考えていて、本のスペースは、イギリスの「チャンプマガジン(CHAMP MAGAZINE)」のスタッフがキュレーションしてくれました。イギリスの珍しい本やおもしろい本を並べています。本を扱うことで、コレクションのインスピレーション源や価値観をよりお客さまに伝えることができると考えています。
WWD:アパレルアイテムの展開も増えてきた。
YOON:洋服も毎シーズン増えています。ただ、フルラインアップで作る予定はなく、ジュエリーに合うモノをと思ってトップスだけに絞っています。例えば、ジュエリーが際立つようにハイネックだったり、ジャケットは首回りを大きめにとっていたり。今年から「アンブッシュ」としても「セブン(SEVEN)」などを手掛けるLDHと協業することで、ジュエリー以外に関しても生産背景を強化することができました。デニムジャケットもラグジュアリーブランドのアイテムなどを生産している岡山の工場に自分たちで出向いたりしながら、一つ一つこだわって作っています。
WWD:パリで3シーズン展示会を行ったが、海外での反応は?
YOON:今は国内が6割、海外が4割ぐらい。最近は、ドーバー ストリート マーケットやバーニーズ ニューヨークなど、ハイエンドなショップでも取り扱っていただきうれしいです。すごくいい反応をもらっていて、フィードバックもあるので、勉強にもなりますね。パリでは数えきれないブランドが展示会を行うので、その中で負けないようなコレクションを作らないと、という励みにもなります。海外では、クリエイションは当然で、そこにストーリーなど、何か他のバックグラウンドを求められたりします。
VERBAL:国内では、僕がアーティストということもあり、最初は「片手間でブランドをやっているんでしょ」と思われていることもありましたが、海外で認められたことによって、日本でも受け入れたと感じることもあります。海外ではモノをきちんと評価してくれるという土壌があると思います。