今年は美容を切り口としたヘアドライヤーが続々と発売されている。日本電気工業協会(JEAM)によると、16年1~7月の7カ月累計のヘアドライヤー国内出荷額は前年同期比37.9%増の173億4600万円と伸長。その背景として、「家電におけるインバウンド需要は減少傾向にあるが、電子ポットなどに比べるとヘアドライヤーは持ち運びやすく、外国人観光客の需要がけん引している」と分析。また、日本人女性には、多機能が進み美容機器としてとらえられてきていることから高価格帯の商品も支持されている。「ダイソン」が発売したヘアドライヤーを筆頭に、髪を乾かすだけの機能にとどまらず、その斬新な切り口やデザイン性で購買意欲を喚起している。また、店頭でのプロモーションを強化するなど新客との接点を積極的に持っていることも寄与している。
頭皮環境を整える「ヤーマン」のスカルプドライヤー
「ヤーマン」は15年5月に同社初となるヘアドライヤー「スカルプドライヤー」を発売した。発売理由は、「頭皮ケアへの関心の高まりを背景に、ヘッドスパなどの頭皮ケア製品を販売しているが、販売数も好調に推移している。そこで、ヘアドライヤーで頭皮ケアができる『スカルプドライヤー』を開発。これまで頭皮ケアに面倒くささを感じていたユーザーのニーズを満たすことができる製品として発売した」(町居千都・ヤーマンPR 担当)。「スカルプドライヤー」は。「頭皮に直接当てて使う、頭皮のためのドライヤー」をコンセプトに掲げ、既存のヘアドライヤーとの差別化を図ることに成功。「発売と同時に頭皮ケアの意識が高い男性だけではなく、女性からも予想を上回る反応を得ることができた」と話す。そこで、女性をターゲットにした「スカルプドライヤー ロゼ」を16年5月1日に発売した。全てのモードにマイナスイオン機能を搭載し、バイブレーション振動するブラシアタッチメントを頭皮に直接当てながら乾かすことで、育毛剤が浸透しやすい環境に整える。今後は「ヘアケア・頭皮ケア専門の企業とのコラボレーションを機に認知度を高める」。
若い女性から指示される「ダイソン」初のドライヤー
「ダイソン」が5月11日に発売した「スーパーソニック」は、8月15日時点で、1万円以上のヘアドライヤーの中で、家電量販店の金額シェアは25. 8 %を獲得(Gf K調べ)。「量販店では、『ダイソン』の他の商品に比べ、過去最多の予約数を誇り、ブランド(メーカー)別で見ても販売金額は2位のシェアを獲得。また、当初販売目標の2倍近くの数が売れている」(赤野景子ダイソン・コミュニケーションズ担当)と、好調に売り上げを伸ばしている。購買層は、「『ダイソン』ファンのお客さまに加え、美容意識の高い若い女性のお客さまにも反響がある」。ユニークなハンマー型に加え、低温度で風量が強く髪を傷めずに乾かせることも支持を得ている。今後は、「テレビ広告をはじめ、美容誌など積極的なプロモーションを実施し、美容意識の高い女性のお客さまへの訴求を強化する予定」と意気込みを語る。
「パナソニック」は髪のうるおいケアを提案
「パナソニック ビューティ」は9月1日、12代目となる「ヘアードライヤー ナノケア」を発売した。125℃設定で温冷リズムを搭載し、髪をほぐしながら乾かすことを重視。髪の水分バランスを整える“ナノイー”発生量と“ナノイー”風量がそれぞれ既存品に比べ約20%アップし、指通りやまとまりなどの髪の効果実感を訴求する。同ブランドは、07年に先陣を切って“高級ヘアドライヤー”として、髪を「乾かす」だけではなく、髪の「ケア」ができる「ナノケア」を発売した。その後、リニューアルを重ね、髪のダメージを気にする現代女性のニーズを捉え、累計販売台数は700万台(16年6月時点)を突破した。中和田美紗パナソニック コンシューママーケティングジャパン本部 コミュニケーション部担当は、「『ナノケア』は、速乾性や髪質改善の効果があることをタッチポイントで伝え、ヘアケアの性能を実感できるようなイベントを展開する予定だ」と意欲を燃やす。