ファッション素材見本市「プルミエール・ヴィジョン」は若手デザイナーの登竜門であるファッションコンテスト、「イエール国際モード&写真フェスティバル」のメーンスポンサーも務めている。同見本市の会場では、4月の同コンテストでグランプリを獲得した富永航(とみなが・わたる)のインスタレーションも展示した。プリント柄の上に、さらに転写プリントを重ねた服は、鮮やかなビジュアル効果を生み出し、服や素材に新しいイメージを与え、インスタレーションには多くの人が足を止めて見入っていた。武蔵美術大学を経て、英セントマーチンズ美術大学でプリントデザインを学んだ富永航に、服作りとプルミエール・ヴィジョンとの関わりを聞いた。
WWDジャパン(以下、WWD):自分のクリエイティブの特徴をどう考えている?
富永航(以下、富永):武蔵美術大学では工芸科でテキスタイルを学び、セントマーチンズ美術大学ではファッションプリントを研究していたこともあり、ファッションの新しさという意味では、シルエットやパターンよりも、素材やテクスチャーの方に関心がある。素材から発想すればファッションをもっと進化させられるという思いが強い。コンテストに出した服は、服になった後に転写プリントしたものだけど、デザインのプロセスとしては、始めにテクスチャーがあって、その後に服をデザインした。
WWD:プルミエール・ヴィジョンのサポートは?
富永:グランプリ受賞者には、賞金の他に来年のコンテストで発表する機会が与えられる。その際には「シャネル」の持つ、テキスタイルや刺しゅう、レース、シューズなど6つの工房の協力を得られる。これは非常に大きい。すでに1度工房を訪れているが、もともとこうした工房はずっと昔から騎士や軍の服に使う勲章やアクセサリーを作っていて、そうした貴重なアーカイブを持っている。ファッションの歴史の原点に触れられるのは、自分にとってとても大きな意義がある。
WWD:今後の活動は?
富永:コンテストを見に来てくれた人の中にパレ・ド・トーキョーのキュレーターがいて、パリでアーティスト・イン・レジデンスのオファーをしてくれたため、8ヵ月はパリに滞在する機会を得た。来年4月の「イエール国際モード&写真フェスティバル」での発表まではパリでクリエーションに打ち込む。その後はまだ今は考えられない。ただ今後は、個人的にはファッションだけでなく、アートにも関心がある。アートは付加価値だけを追求するもので、どこかに実用性を残すファッションとは違うものだが、この2つをクロスオーバーさせるようなことにも取り組んでみたいと思っている。そのため日常できるための服のデザイン以外でも、ダンスやパフォーミングアートのための衣装やアートとのコラボレーションできたらと思っている。