ファッション

リフォーム事業に百貨店が本腰 今後の需要に合わせサービスを充実

 中古物件のリノベーション需要の増加に伴い、インテリア・ブランドにも連動した動きが見られる。「アルフレックス(ARFLEX)」は東京・恵比寿の直営店をリニューアル。8月末に行われた内覧会で、保科卓アルフレックス社長は「以前は百貨店での購買が多かったが、消費者の購買行動が変化し、コーディネーターなど専門家とじっくり選ぶようになっている」とコメント。同社の売上高構成比も2002年は百貨店が50%、設計事務所27%、直営店12%、ハウジング企業5%だったものが、15年にはハウジング企業が28%と大幅に伸び、設計事務所が25%、直営店18%、百貨店は15%と大きく減少した。

 そんな中、百貨店でもリノベーションに対するサービス強化の動きが活発化している。西武池袋本店(SEIBU IKEBUKURO)では、7階インテリアフロアに6月、50歳以上の暮らしと住まいにフォーカスした「くらしのデザインサロン」をオープンした。一級建築士をはじめとするプロが常駐でコンサルティングを行い、住宅のリノベーションからインテリアコーディネート、暮らし全般をサポートするという内容だ。三越伊勢丹(MITSUKOSHI ISETAN)は8月東京・青海で開催された「ハウス ビジョン2016 東京(HOUSE VISION 2016 TOKYO)」でモデルルームを展示。三越伊勢丹インテリアデザインサービス(以下、IDC)によるリフォームと同社バイヤーによる家具や生活雑貨の提案を行った。

 西武池袋本店はリフォームサロン開設約2カ月で、相談数は1000件を超えた。同店は12年から、50代以上の暮らしの充実を目指す一般社団法人ケアリングデザインと協業して「くらしのケアリングデザイン展」を期間限定で開催してきた。リノベーション提案や推奨製品の展示をはじめ、セミナーなどを実施。好評を受け、常設化したのが「くらしのデザインサロン」(約200平方メートル)だ。住環境と、使用する商材を両輪で提案。理想的なシニアライフのモデル例として、約70平方メートルのリノベーション空間を設置。現在の展示は、子どもが自立したシニア夫妻の住まいを想定し、食を通して家族や友人のコミュニケーションを充実させる「キッチンリビング」がテーマだ。指田孝雄そごう西武商品部雑貨統括部長兼インテリア部部長は「リフォームする際、どこに相談していいか分からないという声が多くあった。このサロンは、消費者と建築家やインテリアデザイナーをマッチングするのが目的だ」と語る。告知は自社と関連企業のホームページやSNSだけで、大々的に行ったわけではないが、予想以上の反響を呼んでいる。西武のリノベーション参入は百貨店としては最後発。「社会の変化を再認識した。プロと組んで提案することで、西武のカラーを出していきたい」。常設の家具売り場はなくなったが、7月の家具の売り上げは前年同月比2倍(既存の編集売り場ルームルームズを含む)となった。同サロンが消費者と家具ブランドをつなぐパイプ役になり、在庫を持たず売り上げアップという画期的な成果を上げている。「家具を並べるのが通常の販売方法だが、消費者の購買傾向が変わった。単なる品ぞろえだけでは実売につながらない。家具を置く環境も含めて提案することで、消費者が住空間をイメージしやすく、それが家具の売り上げにつながっている」と指田部長。必ずしも展示してある家具そのものが売れるわけではないが、このサロンの展示を通して、ブランドのショールームへ足を運び、購入する消費者が増えている。10人程度の少人数で、資産運営や“50~100歳の生き方”などのセミナーやワークショップも行っているが、「これらが好評で館全体の買い回りにも貢献している」。リフォームというと専門性が高く、時間もかかる。すぐ売り上げにつながりにくい商材だが、潜在的な購買につながっている一例といえる。

 三越伊勢丹は8月、東京・青海で開催された近未来の家の形を模索する展覧会「ハウスビジョン 2016 東京(以下、ハウスビジョン)」へ建築家の谷尻誠と吉田愛と協業で「遊動の家」を展示した。約80平方メートル・3LDKを3000万円でリフォームすると想定したモデルハウス内に、三越伊勢丹のバイヤーがセレクトした家具や生活用品を展示。インテリアコーディネートや住宅のリノベーションなどを行IDSの取り組みと、百貨店ならではのライフスタイルに寄り添うアイテムの提案が融合した空間が登場した。この取り組みは2012年にスタート。今は伊勢丹新宿店や日本橋三越本店を含む7店舗でコーナーを構えている。斉藤宏太・商品統括部リビング統括部リビング第二商品IDS計画担当は「百貨店の枠を超えた空間でのライフスタイル表現ができるのが最大のメリットだと考え出展した」と述べる。ハウスビジョンの展示では、視覚的に訴える「家」を提案するためにターゲットを、「ニューノマド」と設定。定点居住というよりも仕事で自由に移動する高所得者のライフスタイルを想定し、部屋ごとの仕切りを出来るだけなくしたオープンな空間を提案した。IDSでは昨年、外部のインテリア・コーディネーターと、今年からは建築家との取り組みをスタート。今回の展示をきっかけにさらに強化を図る。「「三越伊勢丹の独自性を高めたい。従来の型にはまらないセンスとライフスタイル提案が大切。われわれの強みである『衣』『食』『住』のアイテムをコーディネート提案し、新たな価値観を作り出すのが課題」と斎藤計画担当。専門性を持ったプロとの協業を通して、さまざまなライフスタイルを持つ顧客との対話を深め、新たなビジネスにつなげていく。

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