9月21日からミラノ・コレクションがスタートしました。お天気良好!盛り上がっていきたいと思います。
60年代風、70年代風、80年代風など、各時代には多くの人が共通して思い浮かべるイメージがありますが、後に振り返って2010年代風として語られるのは、きっとスポーティーなイメージだと思います。昔なら運動をする時に着ていたようなジャージーやスエット、ジョグパンツを日常使いにとか、機能素材をドレスアイテムにとか、スニーカーブームとか、スポーツ要素を取り入れる提案はここ数年、ランウエイでも繰り返し登場しています。もはやトレンドというより現代の服作りのベースですよね。
今季もスポーツは満載!
ミラノのトレンドセッターであるマッシモ・ジョルジェッティは「エミリオ・プッチ」で、大胆にもほぼ全アイテムをジャージーで作りました。その徹底ぶりが半端ない。ポプリンやジョーゼット、チュールに見える薄くて軽いフェミニンな素材からブーツまで、ぜ〜んぶ伸縮性のあるジャージーです。
“プッチ”らしい明るい色も大胆に使って、スポーティーに。「トライバルな感覚を持った、世界中を旅する人のワードローブ」だそうで、確かにこれなら皺にならなくてストレス・レス。出張中、到着初日にスーツケースから出した服にセッセとアイロンをかけることが悩み(?)の種である自分の視点で見ても納得です。
スポーティーな素材が支持されるのは、単に快適であるという以上に、スポーツから連想する「ヘルシーな生活」が現代人の憧れだからではないでしょうか?“リッチになりたい”といった欲求と同じくらい、もしかしたら今はそれ以上に、“ヘルシーでありたい”ことが私たちの欲求になっていると思います。
そんなスポーツのインスピレーションを深める展覧会がミラノのアルマーニ/シーロスで始まりました。「アスレチックボディーの感情表現」と題した写真展のモデルは、陸上や体操、バスケットボールなどなど様々な分野のアスリートたち。“ほれぼれする身体美”展、と言い換えてもよい内容です。
技を向上し、勝つために鍛え身につけた“理由ある”筋肉は、展覧会のタイトル通り、無言ながら雄弁で、本当に美しい。ダビデ像を例に出すまでもなく、イタリア、特にローマには人間の身体美をたたえる文化が古代から脈々とありますが、その価値観を現代的に解釈するとこうなるのだな、と写真を見ながら思いました。デザイナーのアルマーニがスポーツと深く関わっているのも、単にビジネスというより、そこに“美”を見出しているからだと思います。
「エンポリオ アルマーニ EA7」が、リオ五輪のイタリア代表チームに公式ユニフォームを提供したこともあり、内覧会にはイタリアのオリンピック代表選手たちがジャージー姿で大勢来ていました。おしゃべりをしていた2人に話しかけたら、柔道のゴールドメダリストであるファビオ・バジーレ選手(左)と、レスリングで銅メダルのフランク・チャミゾ選手(右)だったり。
彼らはメダルをジャージーの内側にしまっていたので最初はスター選手だとは気づきませんでした。メダルを持っていない選手への配慮なのか、振る舞いはごくごく控え目。日本から来たこと伝えると、「いい天気ですね!」と何度も日本語で言ってくれてサービス精神もたっぷりで、魅力的な人たちでした。
ファッションウイーク中に、こんな風にトップアスリートと触れ合って、トレンドについても考えを深められるとは……。ファッションデザイナーとスポーツの素敵な関係を日本も見習いたいです。