「スポーツマックス」のコレクションのインスピレーション源は、なんと、なんと!日本海女さんでした。80年代に発表された写真集「志摩の海女」(撮影:浦口楠一)に着想を得たそうです。
かれこれ15年くらいミラノやパリのコレクションを取材しており、数千回ファッションショーを見て、さまざまな変わったインスピレーション源に触れてきました。日本からヒントを得たコレクションも本当にたくさん見てきました。ですが、初めてです。海女さんは。会場の席に座り、リリースに「shima no ama」という言葉を見つけた時は、なんだかとても嬉しくなりました。
実際にランウエイに登場した服は、波の模様や、ブルーの色合い。スポーティーなディテールから海を感じるものの、言われなければ日本人でもそれが海女さんから着想を得たとはわからないものでした。随所に取り入れられた丸い(○)モチーフが、もしかしたら潜水具かな?という位。それもそのはず、リリースを読み進めると、影響を受けたのは「海女さんたちの笑顔、そして“joy of life”」とあります。写真集を見るとわかるのですが、モノクロで大胆に切り撮られた写真は、女性たちが身体ひとつで海に潜る姿や、収穫の喜びの笑顔を見せる姿が印象的で、躍動感や強い生命力を感じさせます。
「スポーツマックス」のデザインチームは日本に行って海女さんに会ったわけではなく、この写真集から想像の翼を広げたそうです。
“joy of life”はミラノを通じて気になるキーワードです。生命力、生きる喜びとも置き換えられると思います。例えば色で言えば、水晶のローズクオーツやマゼンダ。母性の象徴のようなこの色が気になります。
こちらは「ブルーガール」。
日焼けしたようなメイクにマゼンダカラーのドレスを合わせ、半分屋外の回廊を歩く姿は生き生きとしていました。ショーの前にバックステージでデザイナーのアンナ・モリナーリが日焼けした笑顔で「人生を謳歌すること」と話していたことが印象的です
こちらは「トラサルディ」。ショーの冒頭にこのカラーリングのルックが続きました。
「トラサルディ」のショーは音楽がいつも素敵で、今回も6人の男女による歌声をバッグにショーが行われました。何もない空間に歌が響くと、そこが突然ライブ会場に生まれ変わる。歌っている人たちが本当に楽しそうで、これはまさに“joy of life”。どんどん引き込まれて、見ているこちらもノートを片手に自然と体が揺れます。そして、目の前の服も引き立てる。ローテクだけど、音楽の、特にライブの力って凄いな、と今回も思いました。
歌とダンスさえあれば、どんな時もなんとかやってゆける!と思ったのは、「ドルチェ&ガッバーナ」のショーもそう。ショーが始まると同時に、数えきれないほどのストリートダンサーがランウエイに躍り出て、ナポリのカンツォーネに合わせ、歓声をあげながら飛び跳ねて踊りました。ショーが終わっても踊りは終わらず、会場を出る時は彼らに腕を取られてクルクル回りながら歩きました。楽しい!
まさにjoy of life。イタリア流トロピカルをテーマにした服もスーパーポジティブです。デザイナーからのメッセージです。「もはや服は着るだけのものではない。それは物語であり、感情の表現であり、人生そのものです」。いいですね。
自然災害や社会不安などなど、本当に暗いこと、不安定なことが多い世の中ですが、そんな時こそファッションはそこに同調することなくポジティブにゆきたい。ミラノはいつもそう思わせてくれます。