ミラノ・コレクションは数年前、メディアの数が激減して、日本に限らず、特にファッション誌編集長の多くはミラノをスキップしてパリから、といった風潮がありました。“ミラノはトレンド性に乏しいからマストではない”という位置づけだったのですね。ところが、最近は取材メディアの数がグッと増えてにぎやかに。明らかにアレッサンドロ・ミケーレの吸引力です。
という訳で、「グッチ」のショーの前、会場周辺のカフェの様子がこちら。
午後早い時間のショーだったこともあり、食べ物が見事に売り切れ!ウインドウーが空っぽです。遅めに到着した「WWDジャパン」チームが最後のひと皿のトマトパスタと、最後のサラダを平らげました。ファッションショーの経済効果を目の当たりならぬ、お腹で痛感です。
業界関係者に特に人気があるのが、「グッチ」の靴。こちらは、とあるショーの最前列です。私の視界に入る左側は、4人が「グッチ」の靴を履いています。
ショー会場をピンク一色に染めた今季の「グッチ」もパワフル。装飾満載でファンタジー度は加速し、“ファッションは楽しい”と素直に思わせれくれると同時に、神秘的でした。
アレッサンドロのクリエイションも注目ですが、今回お伝えしたいのは店頭での接客についてです。ミラノコレ開幕前日、イタリア版FNOの視察で訪れたモンテナポレオーネ通りの「グッチ」の直営店で、何気なく手に取ったリングのデザインに個人的な想いが重なり「お守り」として購入しようかと迷っていたところ、マダムな販売員さんがネックレスも出してきて「これもどう、絶対買うべきよ。裏を見て、こんなデザインになっているの」とグイグイとプッシュしてきました。そんな風にプッシュされたら嫌になりそうですが、これが全然ならないから不思議。むしろ、実はそれがずっと探していたデザインに近かったから、思わず前のめりになりました。
で、思わず「実は亡くなった大切な人の“心”を持ち運びたくて、そんなデザインのアクセサリーを探しているの。アレッサンドロのデザインには、スピリチュアルな魅力があるわよね」と、我ながらかなり重めな告白を初対面の彼女に向かってしていたのです。自分でも予想外。思わず口にしていた、という感じです。フレンドリーな接客に心を許し、“彼女に聞いてもらいたい”そんな気持ちになっていた気がします。
初対面の客の“告白”を聞かされた彼女は、ほんの一瞬動揺を見せて瞳を雲らせつつ(当たり前ですよね)、すぐに笑顔に戻って「ならばこれ、最適じゃない〜」と再びプロフェッショナルに、そして明るくプッシュ、プッシュ。結果、購入にいたりました(笑)。予定外の買い物でしたが“買わされた”なんて感覚はゼロ。むしろ、商品と出会えて良かった、話を聞いてもらった、という感覚です。出口まで送ってくれた彼女は名刺をくれて「また来てね」とハグ。また彼女に会いたい、彼女と会話をしたいと思いつつ、店を出ました。
高価な商品を扱いながらも、かしこまりすぎず、フレンドリーで、「買うべきよ」と自信を持って商品を勧めてくる。ちょっと違うかな、という商品を手に取ると「それもいいけど、う〜ん、ちょっと違うんじゃない?こちらの方がいいと思う」と“ノー”の意見もはっきりとしている、プロですよね。ラグジュアリーな商品こそ、こうやって販売員さんと心を通わせて購入したいと思ったのでした。