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ブルネロ・クチネリ氏、東北の若手経営者と未来を語る

イタリアのスポーツシックなラグジュアリー・ブランド「ブルネロ クチネリ」を手掛けるブルネロ・クチネリ氏は今夏、東北経済連合会主催の未来創生シンポジウムに招かれ、基調講演とパネルディスカッションに登壇した。ブルネロ・クチネリ氏は、東北の未来をけん引する有望な若手を育て、地域の発展に貢献することを目的とした「東北発!未来創生プロジェクト」に賛同し、東北出身の若者11人をブランドの拠点であるイタリア・ソロメオ村に招待。あらゆる年代の社員が地域の恵みに支えられながら仕事をして、生み出した利益を地元に還元する企業理念を体感してもらうことで、この取り組みをサポートしてきた。

パネルディスカッションでは、気仙沼で手編みのフィッシャーマンズセーターを生み出す気仙沼ニッティングの御手洗瑞子・社長や、東北の原材料と職人から高級エレキギターをプロデュースするセッショナブルの梶屋陽介・代表ら、東北の若手経営者たちと議論を交わした。その一部、特に地域に根付いた職人に敬意を払うことからスタートする地域創生の在り方を中心にレポートする。

梶屋陽介セッショナブル代表(以下、梶屋):日本の職人は地位が低く、残念ながら離職率が高い。地域創生のためには、この問題を解決しなければならない。

ブルネロ・クチネリ氏:そもそもモノづくりを生業とする企業におけるミーティングは、そこに職人がいなければ意味はない。腕を持つ人たちが集まり、新しいモノを生み出すために知恵を出し合う。本来ミーティングとは、そういうものだ。特別である必要は何もない。一人ひとりがマネージャーという感覚を持ち、特に職人が自発的に動けるムードが広がれば、その企業は好転するだろう。

御手洗瑞子・気仙沼ニッティング代表(以下、御手洗):新しいモノを作ったり、作ろうとしたりするときは「売ること」を考えがちだが、「売る努力」をする時点で、モノづくりの企業としては負けていると思う。とにかく「いいモノ」を作ることを考え続けるべき。商品が本当に良いものなら、お客様はいろんな方法でそれを見つけてくれる。「販路がない」という人が多いが、問題は「選ばれていない」こと。高くても、欲しくなるモノを作れば、消費者やバイヤーは見つけてくれる。

梶屋:僕も、まずはモノについてとにかく考えた。「ほしくなるギター」ではなく、「ほしくてたまらないギター」について考えはじめ、職人や原料を突き詰め始めたら、すべて東北にたどり着いた。例えば、ギターを作る宮大工は岩手県の陸前高田市にいて、すぐれた金属は釜石に、それを削る技術は同じく岩手の花巻で見つかった。木材は、福島県の伊達市。そしてデザイナーは山形出身。結果、すべてを東北でまかなうギターが誕生した。こうして生み出した商品には、ものすごい説得力があると思う。

ブルネロ・クチネリ氏:モノ作りには、2つの道があると思う。まず1つは工業化され、どこでも売れる・売られる商品を作ること。そしてもう1つは、若干高くてもきちんと、わかる人が買い求める特別な商品を作ること。私は、職人に正当な見返りを支払うためにも、そして、地球の恵みを「消費」するのではなく「利用」して還元するためにも、後者を選んだ。今は、「消費」文明を考え直す時。人間の手で、田舎で生まれたモノにこそ関心を持とうとする人が増えている。手に入れたとき、気持ちが高揚するからだ。

PHOTOS BY KAHOKU SHIMPO PUBLISHING CO.