“ノイズ”がコンセプトだった16-17年秋冬コレクションでは、不必要(=ノイズ)と呼ばれるものに美を見出したが、17年春夏では一転して"サイレンス"をテーマに掲げた。コレクションは全てモノクロームで、花柄や幾何学模様も白黒の濃淡で表現。前半に登場したAラインのスカートやワンピース、ケープなど、ここ数シーズンと比べて柔らかい素材のウエアラブルなアイテムが多い。後半に入ると、黒の太い帯が巻かれたようなルックが登場。この帯はARに反応するマーカーになっており、会場に設置されたタブレット端末のカメラを通すと、マーカーの下にあるプリントが画面に映し出される。さらに、海のプリントのワンピースを映したデバイスからは波の音が、VOICEという単語がプリントされたアイテムでは「ボイス」とささやく声が流れるなど、それぞれのルックに音が付けられている。サウンドディレクションは、サカナクションの山口一郎が務めた。
森永邦彦デザイナーは、「前回のコレクションとは対極にある、静寂や沈黙といった要素を取り上げた。服に“声”を持たせることで、沈黙の中にあるはずのないものを表現した。日常と非日常が共存する世界観は常にブランドのテーマだが、このコレクションを通して、現実以外でもファッションを体感して欲しい」と話す。